どんな企業がどのような目的で自社に興味を示すのか?
前回、前々回の連載では、M&Aの四つのタイプ、「水平型」「垂直型」「コングロマリット型」「周辺市場進出型」について紹介してきました。これらは、買い手企業の視点や目的から見た分類です。
翻って、自ら経営する会社をM&Aで売却することを検討しているオーナー社長としては、「自社がどのようなタイプのM&Aにマッチングする可能性があるのか?」を考えてみるのもよいことです。つまり、どのような企業がどのような目的で自社に興味を示すのかという思考のトレーニングでもあります。
このようなトレーニングの習慣を持っておくことで、M&Aのアドバイザーなどと接して実際に買い手候補を探す際、戸惑いを感じることも少なくなるはずです。
まず誰しもが思いつきやすいのは「水平型」のM&Aでしょう。日ごろからの商売仲間や取引先、業界団体の集まりなどで顔を合わせている同業の仲間たちの中で、比較的羽振りが良さそうな会社や事業拡張意欲が旺盛な人たちなどです。中には他県など、事業エリアの異なる地域で展開している人たちもいることでしょう。
ただ、先にも記した通り、そのようなすぐに顔が思い浮かぶ人たちは事業の端々まで熟知しているため、買い叩かれる心配もあります。
客観的な視点を持つ外部コンサルタントを活用する手も
皆さんの会社に興味を示す買い手の候補は、何も業種や事業エリアが身近な会社ばかりではありません。異業種や他県にまで、可能性は広がっていきます。そして、売り手のオーナー社長が思ってもみなかった、あるいは気付かなかった点を評価して「買いたい!」と名乗り出る会社があるかもしれないのです。
特許をはじめとする技術や熟練した職人、特定地域の営業権や大手企業との取引口座、さらには他の用途にも転用できそうな倉庫や工場といった不動産・・・。そういった諸々の点を、どこかにいる潜在的な買い手企業が欲しがっているかもしれないのです。一度、自社の資産や強みと思えるものを、洗いざらい棚卸しして見直してみることもお勧めです。
前回、人気のある市場での販売権が買い手企業の興味を刺激したという話をご紹介しましたが、同じようなことは他の業種にも当てはまります。
例えば、デパートに商品を納入する口座を持っているメーカーや卸業者があったとします。仮にその会社の業績がいまひとつで、赤字続きのうえ債務超過であるとしても、M&Aの対象となり得る可能性は十分にあります。なぜなら、取引実績があり取引口座を有しているというその一点が評価されるからです。
デパートとの取引ができればよいと考えるメーカーや卸は多いでしょうが、そう簡単ではありません。長年の取引実績や絶大な仕入れの権限を持つデパートのバイヤーと深いパイプがなければ、一般に新規参入は困難です。一から営業を続けたり、バイヤーを接待して取引口座の開設を図ったりするより、いっそM&Aで口座のある会社を買ったほうが得策と考える買い手が現れるかもしれないのです。
皆さんの会社の強みと魅力は何か? よく自問してみてください。また、社長自身なかなか気付きにくいのであれば、客観的な視点に立つことができる外部コンサルタントに確認することもお勧めします。