前回は、クリーンエネルギーとしての「プロパンガス」の魅力を取り上げました。今回は、プロパンガスを燃料とする「LPガス車」のメリットを見ていきます。

ガソリン車に比べ「黒煙」や「PM」が少ない

日本でプロパンガスを燃料にした自動車が走りはじめたのは1963年です。この前年、1962年に、プロパンガスを海外から運ぶオーシャンタンカーと、それを受け入れる基地が稼働をスタートし、安定して供給できる環境が整備されたのでした。

 

LPガス自動車の最もすぐれている点は、地球環境にやさしいことです。一般的なガソリン車と比べ、二酸化炭素や窒素酸化物の排出量が少ないことがわかっています。

 

2300ccクラスで約8.7%、ハイブリッド車で約8.0%、LPガス車のほうが二酸化炭素排出量は少ないことが実験で判明しました(日本工業大学「LPガスの環境側面の評価―エネルギー製造・利用のLCI分析―」2009年)。

 

また、黒煙やPM(Particulate Matter=粒子状物質)が少ないことも特徴です(ガソリン車と比べてマイナス約12%)。まさしく、クリーンエネルギーなのです。

 

ガソリン車は、黒煙とPMの排出が多く、それが呼吸器系の病気の原因となっています。また、窒素酸化物や炭化水素が光化学スモッグの原因となり、それが呼吸器だけでなく、目の病気の原因にもなっています。

 

中国の北京でPM2.5が空気を汚していることが問題になっています。2.5は粒子の大きさを表す数値で、PM2.5は粒径2.5マイクロメートル以下の微粒子を意味します。

 

テレビの報道番組で真っ暗な街と化した北京の映像を見た人も多いでしょう。あのPM2.5の主成分は硫酸塩で、ガソリンや石炭を燃やすと発生する二酸化硫黄が、空気中で酸化した微粒子です。亜鉛、銅、スズといった金属類も含まれています。PM2.5を吸うと、気管支を通過し、肺の内側に付着して、体の外に排出できず、ぜんそく、気管支炎、肺がんの原因となります。

 

日本では、1973年に定めた環境基準でPM10、2009年の基準でPM2.5を厳しく規制しました。しかし、中国では規制の基準が緩く、北京が暗闇と化しているわけです。北京のPM2.5は毎年偏西風に乗って海を越え、日本の九州地方の空気も汚しています。

 

話がやや横道にそれましたが、あのPM2.5のような微粒子の排出を最小限に抑えているのがLPガス車です。

 

[図表]ガスエネルギーを燃料とするLPガス車とその構造

価格や静粛性が評価され、タクシー会社・自治体が活用

LPガス車は経済的でもあります。同量のガソリンと比べて走行距離はけっして長いわけではないのですが、単価が安いので、トータルのコストはかなり抑えられます。

 

さらに、自動車メーカー各社は、販売台数を見込めるタクシー仕様車に関しては、車種によるものの同じタイプの自家用車の半額近くで、タクシー会社に提供してきました。タクシー会社の多くがLPガス車を利用している理由はここにもあるのでしょう。

 

LPガス車は静粛性にもすぐれています。エンジン音が小さいのです。同時に振動も少なく、騒音のトラブルを回避できるため、ゴミ収集車をはじめ自治体の車にもよく採用されています。

 

現在、日本全国に2000近いLPガスのスタンドがあります。

エネルギー戦国時代は プロパンガスが制する

エネルギー戦国時代は プロパンガスが制する

後藤 庄樹

幻冬舎メディアコンサルティング

相次ぐ企業統合、新規参入、そして新エネルギーの登場……。 電力・ガスの自由化によってエネルギー業界は大変革期を迎えています。 市場では、大手エネルギー企業を中心に、割引プランやセット割など各社さまざまな施策を…

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