個人投資家が「質の悪い情報」に引っかかる原因
前項で各種の予測法を否定したが、優位性があるとも述べた。そもそもの使い方に、大きな誤りがあるのだ。
ほとんどの予測法では、「天底を当てよう」と躍起になっている。その結果、チャートのタテ軸に目が向くのだが、売買する価格について交渉の余地はなく、常に“市場任せ”だ。
それなのに、「安く買って高く売る」という非現実的な発想をそのまま行動に反映させようとしてしまい、その勢いで「最安値を買う」「最高値を売る」なんて考えを抱く。
そんな“神の領域”を目指すのはやめよう。大切なカネが絡むため、「1回でも損をしたくない」「最安値を買いたい」「利益のチャンスはすべてモノにしたい」と、つい背伸びをしてしまう。この心理が、質の悪い情報にまんまと引っかかる原因だ。
真に質の悪い情報だけではない。間違ってはいないが、実践的な理論にはつながらないアイデア、個人投資家としての道筋からずれた考え方が“まっとうな情報”として扱われていることが多いから、うっかり受け入れてしまうのだ。
重要なのは「上げ相場」に乗ること
「プロは逆張り」というが、本当だろうか? 第1章の「12.間違いだらけのナンピン論」(※書籍参照)とも関係する大切なことだ。値動きとの向き合い方を考えてみたい。
安く買うためには、下がってきたところで買うようにする。この説明自体を誤りとはいえないが、「では、みんなが恐怖に包まれるような下げ相場に買い向かおう」という“攻撃的”な姿勢が肯定されるのだろうか。「ちょっと待った!」と言いたい。
「上げ上げを繰り返す」が前提なら、下げの末期を狙って買い下がれば(下げ過程を分割で買う)良いポジションをつくれる──この論理を実践しようとして大損する人が実に多い。
原因として、値動きの観察が甘い、無計画に買いすぎる、といったことが挙げられるが、最大の誤りは、「安く買わなくては・・・」という強迫観念を行動に直結させている部分にある。
買い値は安いほうがいいに決まっているが、売る(利食いの手仕舞い売り)までの時間(チャートのヨコ軸)ずっと、緊張してポジションを抱えることを考えたら、逆に「あまり安く買わないほうがいい」くらいの発想も生まれる。
買いポジションをつくる狙いはなにか──安い買い値を自慢することではなく、「上げ相場に乗ること」にほかならない。
下げた、下げ止まった、整理の底練りがある、整理がついて徐々に上げに移る、上げが加速する・・・下げから上げへ移り変わる過程にはこんな道のりがあり、それなりの「時間」がかかる。
少なくとも、上記の「上げが加速する」時期までねばって利を伸ばしたいのなら、精神面のことも考えて、ポジションを抱えて戦う時間を短くしたいのだ。
早い段階での出動は、この狙いに反する。逆張りで買い下がる場合、「下げ」に注目するのではなく、「下げ止まり」に全神経を集中させて仕掛け始めの時期を探らなくてはいけない。