イスラム教徒の場合は「ムスリム身分法」が適用
⑴ 概 説
フィリピンには統一的な国際私法が存在していないが,フィリピン民法16条に,相続に関しては,動産不動産を問わず,被相続人の本国法を適用すると規定されている。
フィリピンは,私的身分関係に適用される法律が宗教によって異なる人的不統一法国である。相続に関してはフィリピン民法が適用されるが,イスラム教徒の場合はムスリム身分法が適用されることになるため,注意が必要である。
フィリピン民法では,兄弟姉妹が相続人にならない点に特徴がある。また,ムスリム身分法では,血族,親族関係を重視した,独特の相続ルールが定められている。
ネット上で読める「フィリピン民法・ムスリム身分法」
⑵ 調査方法
インターネット上では,フィリピン法を英文で読むことができる。フィリピン民法は「Civil Code of the Philippines」,ムスリム身分法は「Code of Muslim Personal Laws of the Philippines」で検索する。フィリピンの法律事務所Chan Robles Law Firm のサイトにもフィリピン法が紹介されている。
書籍では,木村三男監修『全訂 渉外戸籍のための各国法律と要件〔下巻〕』(日本加除出版,2007),柳橋博之編著『現代ムスリム家族法』(日本加除出版,2005)に条文が掲載されている。