被相続人が台湾籍の場合、相続準拠法は台湾法となる
概 説
日本政府が,台湾を実効支配している中華民国(以下「台湾」という)政府を正当な政府として承認していないことから,具体的な準拠法については見解が分かれているようであるが,実務上は,通則法38条3項を類推適用して台湾の法律を適用している。
台湾の渉外民事法律適用法は,2011(平成23)年に改正法が施行されたようである(戸籍時報Vol.659)。
同法58条は,「相続は,被相続人の死亡の当時の本国法に依る。」と規定されている。そのため被相続人が台湾籍の場合,相続準拠法は,台湾法となる。
もっとも,同法61条は,「遺言及びその撤回の方式は,前条に依って定められた適用すべき法律のほか,次に掲げるいずれかの法律に依り,これを行うこともできる。」とし,3号で「遺言が不動産に関するときは,当該不動産の所在地法」と規定しているから,日本にある不動産に関する遺言がある場合は,日本法も適用されることとなる。
民法第5編「相続」に規定されている相続法
調査方法
渉外民事法律適用法の和訳は,戸籍時報Vol.659に全文が掲載されている。
また,相続法は,民法第5編「相続」に規定されている。
日本語訳については,藤原勇喜『渉外不動産登記〔新訂版〕』(テイハン,2014)568頁以降に,台湾の民法(中華民国民法)の抄訳が掲載されているが,比較的頻繁に改正されているので,原典にあたるのが望ましいと思われる。
ウェブ上に台湾政府が提供していると思われる台湾の法規のデータベースがあり,原文のほか,英訳を提供している。
ウェブサイトのURLは,http://law.moj.gov.tw/である。検索ワードを「全國法規資料庫」として検索することもできる。このウェブページは,英語で表示できるので,表示を英語に変えて,検索ワードを「civil code」として検索すると民法全文の英語訳が表示される。ただ裁判所や法務局が本国法の証明として承認するかはわからない。