アメリカにはない「戸籍制度」「住民登録制度」
概説
アメリカ合衆国国籍の方が死亡し,日本の不動産が遺産となる場合,通則法36条により被相続人の本国法であるアメリカ合衆国法が準拠法となる。
もっとも,アメリカの国際私法,Restatement of Conflict of Laws249条が,不動産の相続に関しては不動産の所在地国の法律による旨を規定している。そのため不動産の相続については日本法に反致する。
東京法務局に問い合わせたところ,実務上,Restatement of Conflict of Laws249条に基づいて,日本法に従って相続登記の申請を受理しているとのことである。
不動産以外の遺産については,アメリカ合衆国法が準拠法となるが,アメリカの場合は,州ごとに法制度が異なるので,通則法38条3項(「当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には,その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては,当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする。」)の規定に従って,適用される法が決まる。
日本法が適用されるにしても,アメリカの州法が適用されるにしても,相続手続をするためには,相続人であることを明らかにする必要があるが,アメリカ合衆国では日本のように戸籍制度や日本のような住民登録制度がない。
相続を証する書面としては,出生証明書,死亡証明書,婚姻証明書などが考えられるが,相続人の範囲を明らかにすることはできない。そこで相続人全員において,この他に相続人は存在しない旨の宣誓供述書を作成し,公証人の認証を受けることにより,相続人の範囲を明らかにしている。
不動産以外の遺産は「アメリカ合衆国法」が準拠法に
調査方法
上述のとおり,アメリカ合衆国国籍の方が死亡した場合,不動産の相続に関しては日本法が準拠法となるから,その限りでは本国法の内容を明らかにする必要はないので調査方法については割愛する。なお不動産以外の遺産については,アメリカ合衆国法が準拠法となるが,アメリカの場合は,州ごとに法制度が異なるから,本国法を明らかにする必要がある場合,適用される州法を調査する必要がある。