「知性に自信がある人」のほうが騙しやすい!?
昔はよく、医師や学者は「象牙の塔」の住人で、世間知らずだとか、俗世間の付き合い方を知らないだとか揶揄されていました。最近の医師はそうでもないでしょうが、それでも、百戦錬磨のビジネスパーソンなどと対峙した場合には、たやすく手をひねられてしまうものです。
詐欺師にとって一番騙しやすい相手は、「自分は騙されない」と知性に自信を持っている人だそうです。なぜかといえば、そのような人は、自分に自信があるだけに、どんどんと詐欺師の話を聞いて、そのうちに抜けられない深みにはまってしまうからです。
では、どのようなかたちで医師の開業には人がよってくるのでしょうか。
たとえば、金融機関が純粋にビジネスだけを考えれば、貸倒れにならない範囲で、できるだけ多くのお金を借りてもらう方がよいわけです。
だとすると、もし自分の営業成績だけを考える銀行員がいたとすれば、それだけの返済能力がある相手に対しては、その必要がなくても、何らかの理由をつけて多額のお金を貸そうとするでしょう。クリニックというのは、一定の収入が長期間安定して見込めるという意味では、金融機関にとって絶好のお客様なのです。
不動産屋もまた同じことです。不動産屋の得られる収入は、取引を仲介した物件の売買価格の約3%です。1億円の土地の売買を仲介すれば300万円で、5000万円の土地なら150万円です。ひとつの物件を売るのにかかる手間がたいして変わらないのであれば、できるだけ高い物件を売りたいと考えるのが人情でしょう。
また、不動産屋の場合、売り手と買い手のどちらから仲介を頼まれるかで、手数料をもらえる相手が異なってきます。物件を売ってくれと頼まれた場合は売り手から、物件を買ってくれと頼まれた場合は買い手から約3%の手数料を得ます。
しかし、売ってくれと頼まれた物件について、自分で買い手を見つけた場合は両方から約3%、合計で約6%の手数料を得ることができます。ということは、土地を買いたいという相手に対しては、自分の扱っている物件を売りたいというインセンティブが強まるわけです。
このようにお金の流れを知ることで、開業を手助けしてくれる相手の動機が見えてきます。もちろん、人はお金のみで動くわけではありません。きちんと商道徳(相手のためになることを行えば、対価は後からついてくる)をわきまえた人も数多くいます。しかし、中にはそうではない人もいるかもしれないことは頭の隅にとどめておいてください。
微妙な開業場所をすすめる取引先に「不信感」が・・・
私が開業を支援した医師の一人は、当初、薬品卸会社に手伝ってもらって開業場所を探していました。しかし、彼らの見つけてくる候補地がいずれも今ひとつと感じられたために、最終的には手を切ってしまったそうです。
その薬品卸会社が、悪条件の候補地を押しつけてきたというわけではありません。
しかし、医師が90点以上の立地を求めていたのに対して、70点の及第点しか取れないような候補地をすすめてきて「ここでも十分にやっていけますよ」といったことが不信感の原因になったといいます。たしかに、その場所でも経営はやっていけたのかもしれませんが、その医師の理想を実現するには程遠かったわけです。
開業支援を無料で行ってくれる銀行や薬品卸会社などは、そうはいっても、自社のビジネスが一番です。できるだけ早く契約を締結して、その後のビジネスを進展させたいわけですから、時間をかけて最高の立地を探すよりも、それなりの候補地を多く早く見つけることの方が優先されてしまいます。
無料の開業支援は、無料なりのクオリティーしかありません。また、開業までは熱心に支援してもらえたとしても、その後のアフターフォローまでしてくれるところはほとんどないと聞いています。
そこで、開業の際に検討してほしいのが、「開業支援コンサルティング」の利用です。銀行や製薬会社など、クリニック運営に利害関係が働かず、「経営」という目線で開業後の経営までサポートしてくれるのです。