最も発電するのは太陽光とは逆の「秋口から冬場」
今回は、小形風力発電の「社会性」についてお伝えしたいと思う。昨今、太陽光発電の急激な普及によって再生可能エネルギーの占める割合は日々増え続けている。低炭素社会、カーボンオフセットの観点から見て非常に喜ばしい限りである。
ただし一方で、デメリットもある。太陽光発電の用地条件には、日射量が高い・影となる障害物が無い・地価が安い、などがある。これら全てをフォローする場所はそう多くない。例えば、九州や四国、地価を特にいうと北海道などがそうであるが、これらのエリアは東京・大阪と言った経済圏と比べ、電力の需要がそこまで高くない。当然、需要と供給のバランスが崩れることになる。
その結果、太陽光発電においては、東電・関電・中電の中三電と言われる電力会社以外全ての電力会社は供給側が上回った場合、一部の電力を買取らないことができる制度を設けた。これは出力抑制と呼ばれ、2015年に制定された。
大規模停電のリスクを回避するためにも必要な措置ではあるが、せっかく発電した電気を地に返してロスさせてしまうのは、非常にもったいないことだ。その対策として、大形の蓄電池の導入なども進められているが、もう少し時間がかかりそうだ。
各電力会社がこの出力抑制を行うであろうタイミングは、太陽光のよく発電する春から夏の時期、当然日中に起きるであろうことは容易に想像できる。せっかく日本に根づいた再エネが捨てられては意味がない。
風力発電の発電時期、それは秋口から冬場が最も発電するシーズンだ。太陽光のピークと逆の発電時期の風力発電の持つ期待値、それは大きくなった太陽光発電に対してのバランサーの意味が非常に大きい。
ただし、大形風車は環境への負荷も大きく、運転開始までのリードが非常に長い。また大きな風車を建設する建設コストも高く、参入障壁が高いこともある。なにより、周辺住民の理解が何より重要で地域とともに進めるにはやはり時間が必要だ。これを行える事業者は太陽光に対して非常に少ないだろう。
大形に比べて融通が効く、小形風車の設置場所
小形風車はどうだろうか。まず全長でも20m程度の物が多く、半径100m以上離れると環境省の定める生活基準をクリアできるものが多い。また、設置場所は大形に比べ融通が効くため、大規模な山林開発や洋上に設置する必要もない。風次第ではあるが、設置できる場所も多く、太陽光と同じ敷地内に設置するケースも見られてきた。
小形風車に期待される役割は、大形風車とは全く別の所にあると私は思っている。投資家効果ももちろん大切である。ただ、その投資したモノがどのように未来に貢献していくか。それを体験できるものとして小形風車ほど魅力的なものは無いと思う。