500メートル先に進出した大手の新店舗
前回の続きです。
B店で起きた問題の中でもっとも深刻だったのは、大型ホールの商圏進出でした。大手企業が経営する台数900台という大型ホールが、B店からわずか500メートルという立地に新店舗を構えたのです。
店舗の規模はもちろん、ホール内の清潔感や魅力的な機種構成、スタッフの接客など、どれをとっても新しいホールには敵いません。商圏のパチンコファンを取り合えば負けは確実です。ただでさえジリ貧状態なのに、これ以上稼働が落ちればホール営業は成り立たないという瀬戸際に立たされることとなりました。
「1円パチンコ」でジリ貧脱出! 安定的な売上確保へ
悲観的な状況を受けて、私がまず手がけたのはB店及び競合ホールの徹底分析でした。商圏の遊技客は新たに進出してくる大型ホールに必ず奪われます。当然、B店からも遊技客が流出してしまうでしょう。ですから、まずは流出を最低限に抑え、さらに他ホールから遊技客を引っ張ってこなければ、B店の経営は行き詰まってしまいます。
B店の台構成は4円が160台、1円が80台(残りの80台はスロット)というものでした。4円パチンコは稼働が低く、1日あたり5000発しかありません。台売上は8000円前後と低レベルです。一方で1円パチンコは1万4500発程度と比較的稼働がありました。
競合ホールのうち2店舗は500台クラスの大型ホールのため勝ち目はありません。そのため、遊技客を奪うターゲットは自ずと残りの中小ホールになります。そこで、それぞれどんな機種や貸玉部門が強く、どの時間帯に遊技客が増えるのかなどを綿密に調べて戦略のベースとしました。
実際に戦略を立てる上で参考にしたのが、「弱者は強みに戦力を集中して一点突破を図る」というランチェスターの法則です。B店の強みは1円パチンコなので、勝負をかけるとしたらここしかありませんでした。
「1円パチンコで客付きがいい『海物語』を増やそう」
B店は私の提言を受け、遊技機の構成を4円パチンコを120台、1円パチンコも120台に変更しました。
するとこの戦術が見事に当たり、B店の売上はジリ貧を脱して安定的に伸びていきました。大型ホールの出店直後には影響を受けたものの、その後は盛り返しに成功し、大型ホール進出前を上回る利益を残せるようになっています。
大型ホールの開店を受けて、フットワークの軽い若年層の遊技客は奪われましたが、腰が重い高齢者層を取り込み定着させることができたので、売上のブレが少なくなり営業計画を立てやすくなりました。
1円パチンコの増台は入替戦略にも好影響をもたらしました。それまで4円パチンコには月間150万円の予算を組んでいましたが、台数が減っても予算をそのままにすることで、入替率を上げるようにしたのです。これにより、ライバルとなる商圏の中小ホールを上回るペースで設置機種の鮮度が上がっていったので、大型ホールを除けば「地域一番ホール」に成長することができました。