前回は、スモールM&Aで狙い目となる「優良企業」について解説しました。今回は、上場企業による「スモールM&A」の活用事例を見ていきます。

「目的」が多様化する上場企業のM&A

投資家保護の観点から、上場企業が当事者となるM&A案件は公表されるのが一般的です。特に上場企業が買手の場合は、成長性をアピールする好材料となるので積極的に開示されます。一方、中小企業同士のM&Aについては売手が嫌がるケースが多いため、公表されることはまれです。


各社のIR資料を拝見すると、上場企業のM&Aも目的が多様化してきていると感じます。また、上場企業でもスモールM&Aを活用している事例も出てきております。興味を引いたM&A活用の代表企業を考察していきます。


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ミネベアミツミ【6479】は、極小ベアリングで世界トップシェアの企業です。M&Aという概念が日本ではまだ根付いていなかった1970年代に、少なくとも10社以上のM&Aを実行し、現在の礎を築いています。当時、M&Aの活用により海外展開と経営の多角化を実現しているのは驚きです。


しばらくM&Aの表舞台ではあまり名前を聞きませんでしたが、2017年初頭にミツミ電機との経営統合を行い話題となりました。IR資料からも、新商品開発による売上拡大路線から、M&Aに軸足を移しているのが読み取れます。半世紀前からM&Aを経営に取り入れてきた「元祖M&Aカンパニー」が今後どのような展開をみせるのか注目です。


ミネベアミツミを取り上げて、日本電産【6594】を取り上げないわけにはいきません。代表の永守社長はM&Aの使い手として、あまりにも有名です。HPを見ると、1984年からM&Aをスタートし、現在までに54社を傘下に収めています。


「回るもの、動くものに特化し、技術・販路を育てあげるために要する時間を買う」という方針も実にシンプルで分かりやすいです。永守社長は特にPMIという買収後の経営統合実務や新会社の業績向上プロセスを重視しています。業績不振の赤字会社もM&Aの対象として業績アップを狙う姿勢は、スモールM&A分野においても参考になります。


楽天【4755】の主な連結子会社をHPで検索すると興味深いことに気づきます。上位は金融事業がずらりと並びます。カード、銀行、証券、決済、保険事業、投資顧問。これらのほとんどが、M&Aによる新規参入です。金融事業は特に立上げが大変なので、うまく許認可と時間とノウハウを買っていると感じます。

 

筆者も長年金融業界に在籍しており、楽天のこの分野における交渉力等には以前から注目していました。一見、本業とは離れているような「飛び地M&A」に見えても、実行部隊に優秀な人材を抱えているのが勝因かと思います。そして、既存事業の経営資源を活用し、各社とも業績を伸ばしています。本業には辛口なコメントをする人もいるようですが、金融M&A分野においては名手であることは間違いありません。

「数億円以下」の案件にニーズが集まる理由

M&Aの目的も、新規事業の代替手段、技術・人材獲得、研究開発、ニッチ商圏獲得など様々です。このような背景から、数億円以下のM&Aニーズも高まってきています。すぐに決算にインパクトを与えるような案件は少ないですが、M&A実務に慣れ、目的を短期間で達成するには有効かと思われます。


M&Aに失敗はつきものです。上場企業の場合、失敗の開示義務もあります。実行者の多くは経営者ではなく従業者が多いはずですが、規模が大きいと責任問題、場合によっては株主代表訴訟のリスクもあります。そのような背景から、まずは小規模からはじめる選択肢も入れるべきと感じます。


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多くの上場企業ではノンコアと呼ばれる非中核事業を抱えています。経営資源に限りあるなか、赤字ではなくとも事業ポートフォリオの入替ニーズは常にあります。筆者も上場企業の管理担当者としてノンコア事業の売却を経験したことがあります。


さらに、「未使用特許」と呼ばれるビジネスに活用されていない特許が国内に数十万件あるといわれています。分母が大きいので、活用する人がいればキッシュを生む特許はあるに違いありません。このように、スモールに目を向けると、買手が売手にも変わることがあるユニークな市場です。視点を変えれば、必ず売却案件は存在することに気がつくでしょう。

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