今回は、「再生石」とはどのような宝石なのかを探ります。※本連載は、日本彩珠宝石研究所の所長で、独自にコレクション収集も行う飯田孝一氏の著書、『宝石Q&A』(亥辰舎)より一部を抜粋し、宝石に関する様々な疑問についてQ&A方式で答えます。

天然石の粉を結合材を使って成形した石=再生石

Q:ラベルに再生石と書かれて売られている宝石がありますが、どのような宝石なのですか。

 

A:天然石の粉を、結合材を使って成形したものをその様な名前で呼んでいるのです。

 

 

<解説>

 

この名称、宝石の代用品として作られているものを呼んだものですが、かなり不適切なものです。

 

海外では『リコンストラクテッド・ストーン reconstructed stones』と呼んで、トルコ石を始めとして、ラピス・ラズリやマラカイトのタイプのものが多く作られています。アジュライトやアジュル・マラカイトのタイプも見られます。reconstruct(リコンストラクト)には“再生・再編・再建”という意味があり、石にはその内容に相当するものはなく、石を再現したという様なイメージ的なものと思えば良いでしょう。

 

では合成宝石かというと、その様な科学的な方法で作られているものでもないのです。むしろ模造品(イミテーション)といった方が正確なものです。天然石の粉末を合成樹脂などの結合剤で固めて作られていて、そこから技法上の区分では[プラスチック・ボンドplastic bond]と呼んでいます。

 

粒子を1つにまとめて元の原石の形を再現するという意味で再生石と呼ばれているのですが、実際には付けられている名前の石の粉末を使用している事はほとんどありません。

 

唯一その名前の石の粉末を原料として使っているものはアンバーです。アンバーの業界ではそれを「アンブロイド」の名前で呼んでいますが、鑑別の業界ではそれを「プレスト・アンバー」と呼びます。

 

プラスチック・ボンドと呼ぶ製法で作られた原
石。金型と粉末の境目に入れられた新聞紙が
残っています。
プラスチック・ボンドと呼ぶ製法で作られた原石。金型と粉末の境目に入れられた新聞紙が 残っています。

ガラス等で模倣したものを再生石と表示する業者も…

<かんたん宝石学>

 

宝石の多くは、その形を壊して粉末にすると、色を失って白い粉になってしまいます。どんなに鮮やかな色があるルビーやエメラルドでも、信じられないくらいに白っぽい粉になり、その魅力は失せてしまいます。

 

対してトルコ石やアジュライトでは、その形を壊して粉にしても色を失う事はありません。とは言っても色は消失しませんが、原石の時よりも明るい(淡い)色となるので、その粉を固める際には染料を用いて粉を着色しておくか、色をもった合成樹脂を固結材として使用して、本来の色に近づける事が行なわれます。

 

しかし再生石と呼ばれるものは、天然石の代用品を安価に作るという目的だけで製造されていますから、ほとんどの場合は本物の石の粉は使わずより安価な別の白色の石を原料として使っています。

 

ごく稀に本物の原石の粉を使って、微量の結合材を使いプレス加圧で成形したものがあります。[プレスト・ストーン Pressed stones]と呼ばれますが、その場合でも別の石の粉を混入して増量することがある様です。

 

また再生石という名前が不適切に使われている場合もあります。ガラスやプラスチックだけで模倣されたものをこの名前で呼んでいる事もあるので、注意が必要です。

宝石Q&A

宝石Q&A

飯田 孝一

亥辰舎

宝石に関する「なーんだ、そうだったんだ!」を50個のQ&Aに凝縮しました! 天然石・宝石にまつわる疑問に、鑑別家である飯田孝一が明解に回答。間違った知識のまま広がる宝石名や、意外に知らない扱い方など、宝石ファンはもち…

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