前回は、矯正歯科医療で変わる外見と内面の変化について取り上げました。今回は、部分矯正のデメリットについて見ていきます。

歯列に悪影響を与えることもある「部分矯正」

前回の続きです。

 

年代や性別を問わず、大人になってから矯正歯科治療をしたいと訪ねてくる人は「見た目を良くしたいから」ということを第一の目的に挙げる場合がほとんどです。

 

そして、「ここが気になるから、この部分の歯だけを動かしたい」と部分矯正を希望されることもあります。

 

通常の場合、部分矯正は全体矯正に比べて費用が安く抑えられ、矯正期間も短くなります。部分矯正は歯磨きがしやすい、痛みが少ないなどのメリットもあります。

 

このようなメリットに魅力を感じて、「全体矯正よりも部分矯正のほうがいいものだろう」と思ったり、「ここだけを治したいのだから、部分矯正ができるだろう」と考える気持ちはわかります。

 

ですが、気になる部分の見た目を変えることが目的だからと部分矯正を望まれても、「そこだけを動かす治療は行えない」というケースはとても多いのです。

 

なぜかというと、歯は一部だけを動かすことによって歯列全体のバランスが崩れてしまい、噛み合わせがおかしくなってしまうこともあるからです。

 

たとえば「出っ歯が気になるので、上の歯だけの部分矯正でそこだけ引っ込めてくれませんか」と言われることがあります。

 

上の歯だけ全体に矯正器具を付け、出っ歯になっている上の前歯の向きを内側に変えて上下の前歯の位置関係を合わせることは、技術的には不可能ではありません。しかし、上の前歯の向きを変える力の反作用で、必ず奥歯の位置もずれるため、奥歯の噛み合わせが悪くなってしまいます。

全体矯正で噛み合わせのバランスを正すことが理想

ものをよく噛めないと、消化器系に負担がかかって病気になりやすいものですし、噛むことによる満腹感を得られなくて食事の量が多くなってしまう、繊維質が豊富な野菜や固い煎餅などをおいしく食べられなくなるなど、さまざまな不都合が生じます。

 

いくら笑顔が素敵な口元になれたとしても、健康を害してしまったり、他のところに支障が生じてしまうようでは、その治療は失敗です。

 

日本人の骨格の問題もあり、「ここだけを治したい」とやってくる人も、実際に歯並びを診てみると、美と健康の両面からみて、ほぼすべての人が「全体矯正によって噛み合わせのバランスを正していくことが理想的だ」という診断になります。

 

部分矯正は、本当に、”見た目だけ”しか変えることができません。部分矯正で治療をしていても、健康に対してアプローチしているという実感は湧きません。

 

私が矯正歯科治療の相談を受ける際には、部分矯正でやりたいと希望されても、全体的な矯正歯科治療を行う必要があると判断した場合、なぜ全体矯正が必要なのかをきちんと説明し、わかってもらえるよう努力しています。

 

矯正歯科治療をすることは、見た目を美しくするためだけにあるのではなく、噛み合わせのバランスを正し、健康的な身体や快適な生活を手に入れるためのものでもあることを、これを読んでいるみなさんにも知っておいていただければと思います。

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