ベルリンの区や地区より小規模な区分「キーツ」
東西ドイツ統一後、ベルリンは現在の全12区へ再編されました。その12区はさらに98の地区に分かれています。この「区」「地区」は、それぞれに役所が置かれ、郵便番号が割り振られている行政的な区分です。政府機関が集まっている、観光名所が多い、移民が多い、幼い子供のいる家族が多い、大学を中心で学生が多い・・・などの特色があります。
一方、それとは別に、そのエリア独自の雰囲気を色濃く残した小規模な区分が「キーツ」です。東京で例えるなら、「渋谷区の恵比寿にあるガーデンプレイス近辺」という区分イメージです。
それぞれの「キーツ」には、その一角で栄えている通りや中心となる広場、公園、教会などから呼び名が付けられています。たとえば、聖ルードヴィヒ教会周辺なら「ルードヴィヒ教会キーツ」となります。
「キーツ」はもともとスラブ語起源の言葉で、主に漁村集落を意味していたようです。現では、“ご近所”“界隈”“近辺”といった意味で使われていますが、主にベルリンのみで使用されているのが興味深いところです。物件の周辺環境を知るうえで、「キーツ」はとても重要な鍵となります。
各種の「キーツ」周辺は住みやすい環境が整っている
それでは、実際のキーツの例を見てみましょう。
ベルリンの中心部から少し西寄りのシャルロッテンブルク=ヴィルマースドルフ区は、住まいと商業が好バランスで成り立っている区です。ヨーロッパ随一の規模を誇る百貨KaDeWeがそびえる美しい街並みの大通りで街歩きを楽しめると同時に、広大な敷地の公園で緑を満喫することもできます。地下鉄、バスなどの公共交通機関が発達しているのも暮らしには便利です。
この区の南東部に位置するウィルマースドルフ地区は治安が良く、静かで落ち着いた住環境を求める人々に非常に人気があります。今回ご紹介するルードヴィヒ教会キーツは、この地区内にあります。
「ルードヴィヒ教会キーツ」は、聖ルードヴィヒ教会を中心に広がっています。子供連れファミリー、単身者、学生や高齢者など、どの層の住民にも魅力的な環境で、国際色豊かなレストランやカフェが、その多様性に深みを与えています。このキーツにあるプロイセン公園では、週末になるとタイ人による本場のタイ料理を楽しむ人々で賑わいます。
このプロイセン公園から南へ徒歩5分程度の場所にある住居用建物の物件例をご紹介いたしましょう。
1911年に建てられたリフォーム物件で、平米数は約70㎡~170㎡の幅でユニットがあり、販売価格は約3,900万円~1億5,000万円となっています。リフォーム内容は、外観、断熱設備(新築建物と同レベル)3重窓、 新築バルコニー、配管、電気、全共有部分(階段、灯り、壁等)、各玄関ドア、中庭の緑地部分などで、現在も進行中となっています。特に注目すべきは、屋根を取り払って建設するペントハウスです。
ペントハウスをあらたに最上階に建設した中古物件は、現在ベルリンで極めて人気があり、需要が供給を大幅に上回っている状況です。
その理由は、このような古い建築物は文化の象徴であり、そこに住みたい希望者のなかでも富裕層が多いことです。また、このペントハウス部分は新築であるため、快適さと生活の質という面でも優れています。まさに、インカムゲインとキャピタルゲインのつぼを押さえた、最高に魅力的な物件と言えるでしょう。
第8回での連載でもご説明したように、減価償却による節税が見込めることは言うまでもありません。区や地区だけではなく、ベルリン特有のキーツという近隣地域の環境や状況も踏まえ、投資戦略に沿った場所を選定することが、投資を成功させる要因です。