具体的な根拠を示した事業計画書で、説得力を高める
前回の続きです。
③説得力
本当にそのビジネスで売上げを見込めるのか、利益を上げて返済できるのかという説得力です。これは事業計画書によって判断されます。
売上げ予想、利益予想についての具体的な根拠を示すことで説得力は増します。多くの融資を受けたいからといって、あまりに現実離れした予想額を出すと、経営感覚を疑われることになります。
たとえば、600万円を5年返済の60回払いで借りる場合、単純化するため利息を無視すると、月々の利益が、税金を引いた後で10万円以上必要になるということです。さらに融資額が多くなれば、返済していけるほど利益が上がるのか、審査の目はより厳しくなります。
売上げ予想の根拠として理想的なのは、注文書を提示することです。経験と人脈を活かしての起業なら、会社を設立する前から具体的な話が進んでいることも多いはずです。
まだ正式な契約に至っていなくとも、「〇〇〇会社との間で基本契約を結ぼうとしています」と、覚書や雛形などを示せば説得力は増します。それが無理でも話が進んでいると伝えればいいですし、顧客リストも好材料となります。
④資金使途
「借りたお金は、どう使おうと勝手」とはいきません。何にいくら使うかを具体的に提示する必要があり、その内訳によっては借りられる金額が少なくなることがあります。
創業融資を受ける場合、資金使途は設備資金と運転資金。設備資金とは設備など大きな金額のかかる初期投資で、オフィスや店舗の敷金、保証金、内外装・看板工事費、車両、机、テーブル、椅子などの備品、パソコン、プリンタなどの機器の購入費、またソフトウェアなどの開発費、フランチャイズの加盟金なども含まれます。物件のチラシ、備品を揃えるための見積書などを提示し、何にいくら必要なのかを示します。
一方の運転資金は、会社を運営するのに必要な資金。仕入資金、従業員の給与、役員報酬などの人件費、加えて家賃、外注費、旅費交通費、通信費、水道光熱費、宣伝広告費、交際費、消耗品費、リース料などの諸経費がこれに当たります。
こうして見てくると、なんだかとても面倒に思えてきますね。でもよく考えてください。お金を借りるのに、そうやすやすといくわけがないのです。言い換えれば起業に「甘え」は許されないということです。
融資は「自己資金で不足する部分」を借り入れるもの
●1000万円を超える融資は難しい
潤沢な資金を求めても、借りる必要性が認められなければ却下されます。本当にいくら必要なのかをまず割り出し、自己資金で不足する部分を借り入れるのだと考えてください。借りるまでもないだろうと見なされれば、貸してもらえません。たとえば、コンサルタントを始める場合、創業融資の枠が3000万円あっても、「200万円で十分でしょう」と判断されることもあるのです。
また、審査側の決裁権限もひとつのポイントです。支店が決裁できる上限は金融機関や融資制度ごとに決まっています。これを超えると本店決裁となり、審査のハードルは高くなります。
現実的には、創業融資で1000万円を超えると審査を通るのはなかなか難しいと考えてください。起業したばかりの人にリスクを負わせたくないこと、なにより1000万円を返済していくビジネスは、並大抵のことではないからです。
<ミニ用語解説>
個人信用情報機関
個人信用情報機関には、個人の氏名、住所、生年月日や勤務先に加え、クレジットカードの利用状況、ローンの借り入れ状況、延滞、解約といった返済状況などの情報が登録されている。シー・アイ・シー(CIC)、日本信用情報機構(JICC)、全国銀行個人信用情報センターの3機関があり、自分自身の個人情報の登録内容はパソコンや郵便、窓口で開示を求めることができる。
*株式会社シー・アイ・シー http://www.cic.co.jp ℡0570—666—414
*株式会社日本信用情報機構 http://www.jicc.co.jp ℡0570—055—955
*一般社団法人全国銀行協会全国銀行個人信用情報センター
http://www.zenginkyo.or.jp/pcic ℡0120—540—558