今回は、遺言書の欠点を補完するための「信託」の使い方を見ていきます。※本連載は、税理士法人おおたか代表社員、税理士・公認会計士の成田一正氏監修、株式会社継志舎代表取締役、一般社団法人民事信託活用支援機構理事の石脇俊司氏執筆の著書、『相続事業承継のための民事信託ワークブック』(法令出版)より一部を抜粋し、民事信託の基本的な仕組みと、税務上の留意点を説明します。

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遺言と信託をセットにして相続に備えることが最適

自身の資産の相続において一般的に活用されているのが遺言です。最近では、相続に備えて多くの人が遺言を書くようになっています。

 

一方、信託は、信託が可能な財産しか信託財産とすることができない点において、遺言に比べて対応可能な範囲が限られています(注:信託法第16条には、信託財産の範囲の定めがあります。信託行為において信託財産と定められた財産と、信託財産の管理、運用、処分、滅失、損失その他の事由により受託者が得た財産は信託財産となります)。

 

しかし、遺言においてもその問題点はあり(以下の図表参照)、資産承継において必ずしも万全な法律制度ではありません。そのため、遺言と信託をセットにして相続に備えることは有効な方法となります。

 

[図表]遺言の問題点(一例)

信託が補完できる「3つの点」とは?

信託は遺言の問題点について以下のような点を補完します。

 

●受託者が、信託目的の実現のために信託財産を管理することで、委託者の意思を凍結することができる

 

●信託の設定により、信託財産は委託者の生前より受託者に移転するため(遺言信託を除く)、生前より信託財産の管理が確実に行え、財産の劣化等に対処しながら次世代以降に承継することができる

 

●相続人が亡くなった後の次の承継先を指定すること(後継ぎ遺贈)が可能となる

 

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