税務調査への準備は「決算時」に行う
節税したつもりが、税務調査で否認されたら意味がありません。修正申告の結果、加算税や延滞税が多額にかかってしまったら、かえって無駄な支出を伴うことになってしまいます。
節税対策を実行する際には、税務調査で否認されないために、以下の点に注意していただきたいと思っています。
①税務調査の準備は決算時に
税務調査対応マニュアルなるものを見ると、「事前準備」「当日の対応」「事後折衝」のそれぞれの段階での対処法が記述されています。けれども、この段階で対応できるものは限られています。
偶然行った取引が結果的に節税になることもありますが、節税対策はあらかじめ計画的に行われるものであるため、「その支出の必然性」や「その処理の妥当性」については決算時や税務申告時にその経緯についての記録を残しておく必要があります。税務調査時にその取引を思い出しながら説明するより、その状況の真っ只中にいるときに記録しておくべきなのです。
ベテラン調査官と心理戦を繰り広げる時代は終わり
②決め手となるのは議事録・契約書・規程
最近の税務調査では調査官の若返りにともない、マニュアルどおりの税務調査が行われる傾向にあります。調査官による証憑、契約書、議事録、稟議書、規程のチェックにより、事実関係の確認と税務処理の正当性の判断がなされます。
口頭でうまく説明をしたつもりでも、角度を変えた質問に対して柔軟に回答することは想像以上に難しいため、書面を整備していないとつじつまの合わない説明をすることになってしまいます。ベテラン調査官と心理戦を繰り広げる時代は終わり、書面での説明が欠かせなくなってきました。
③同族取引には要注意
会社と役員、会社と関連会社の取引は、税務調査で重点的に調査されます。同族取引は、独立企業間で行われる取引に比べて不自然な点が多いため、寄附金と認定しやすいからです。同族取引が否認されないためのポイントは取引価額、決済状況、必然性です。
【資産の移転の場合】
資産の移転については、譲渡価額と決済状況が問題となります。同族間での譲渡価額の決定は、時価の査定をもとに慎重に決定しなければなりません。また、形式上の譲渡や販売が行われていても、代金の決済がなければ不自然な取引として否認されても仕方ありません。
【役務の提供の場合】
税務訴訟で圧倒的に多い科目は「業務委託費」といわれています。不動産などの資産の移転と異なり、業務委託における取引価額は設備を利用するコストや人件費がベースとなります。
派遣であれば派遣会社からの見積もり、配送であれば運送会社からの見積もり、保管であれば倉庫業者からの見積もり、経理や給与計算であればアウトソーシング会社からの見積もりが参考となります。また、分社により本社業務から切り離す場合などは、その経緯と必然性を十分に書面で説明できるようにしておく必要があります。
以上のことを頭に入れたうえで、次回から説明する節税ポイントの実行を試みるようにしてください。