納税をコントロールして「赤字」に備える
会社の利益に対して課税される法人税は、利益が生じた事業年度には納税の義務を負いますが、損失が生じた事業年度には納税の必要はありません。会社は必ず利益が出るとは限りませんから、納税したりしなかったりを繰り返すことになります。
利益が出たときには節税対策により翌期以降に利益を繰り延べて、赤字のときに備えることが、納税をコントロールすることだといえます。納税がコントロールできるか否かによって、会社の内部留保額が上下するため、最終的に株主へ分配される金額に差が生じます。
納税をコントロールしなかったA社とB社の30年間の経営状況と納税額のケースで考えてみましょう。
A社では、最初の15年間は毎年利益が発生し、その合計が15億円だったとすると、法人税を約5億円納めることになります。その後、毎年損失が続いてその損失合計が15億円だとすると、後半の15年間の納税はゼロとなります。その結果、30年間トータルでの利益がゼロであるのに対して、5億円も納税したことになります。
B社では、30年間毎年利益がゼロであったとすると、30年間トータルでの納税額はゼロとなります。
2社を比較すると、30年間での利益は同額なのに、納税額においては5億円もの差が生じたことになります。会社が毎年利益を計上している場合や、毎年必ず損失を計上している場合は、通年で納税額を比較しても、このような差は出てきません。
A社は、この5億円があれば苦しいときに手形の決済ができたかもしれません。ビジネスチャンスを生かした設備投資や人材育成ができたかもしれません。実にもったいないと思いませんか。
会社は利益を計上する年度もあれば損失を計上する年度もあるからこそ、節税対策が必要となってくるのです。
資本金や株主構成を見直すだけで節税が可能に
税制改正は毎年行われています。法人税、所得税、相続税、贈与税はその時代の国の財政や産業構造の変化により手直しが随時行われています。
改正されたことを知らずに特例の適用を失念すると、設備投資や人材採用、不動産売買などにおける税額計算で不利な結果となり、ムダな税金を納付することになります。資本金や株主構成を見直すだけで、特例による税額控除の適用や軽減税率の適用を受けることが可能になり、同じ金額を支出するのでも支払方法や取引形態を変えることにより損金処理が可能になる場合もあります。
法人税を節税した結果、相続税や所得税をも減少させることができたり、従業員のモチベーションアップや生産性の向上につながることもあります。節税の効果は、単に税負担を減少させるだけではないのです。
納税は国民の義務ですが、合法的に節税するのも国民の権利です。会社の利益を福祉や介護などの特定の目的のために使ってもらいたければ、そのときは国や、特定の機関に寄附をするという方法もあるのです。寄附という行為により税負担を減らすことができれば、会社のお金を有効に活用できることになります。
節税もキャッシュフロー改善の一部
会社の経営上、すべての支出は収入との因果関係を有しています。給与を支払えば労働力が手に入り、商品を仕入れれば売上のもとになり、高い家賃を払えばより広いオフィスに引っ越すことができます。
しかし、税金の支払いには、一部を除いて収入や便益との因果関係を見つけることができません。そのため無駄な税金をたくさん支払ってもあまり意味がないことになります(社会貢献という点では意味があります)。会社は、営利を追求して株主に還元するのが使命であると考えると、節税は当然のことといえます。
近年、キャッシュフローの充実が最優先課題となっております。資金繰りショートの原因は売掛金、在庫、借入金の返済といわれていますが、節税による課税の繰り延べは重要なキャッシュフロー改善の手法であることも忘れてはいけません。