2000年以降、様々な法整備が進められた住宅業界
2000年辺りを境にして、建築・不動産業界は大きく変化しました。品質の確かさと情報の公開を、政策そして市場(消費者)からより当たり前のものとして求められたのです。背後にはインターネットの台頭があります。
まずは2000年以降の住宅業界を政策面から振り返ってみると、一般の方が安心して住宅を取得できるよう、法整備や金融政策が進められた時代でした。
例えば2000年の品確法(※1)、性能表示制度(※2)、03年のフラット35(※3)の導入、06年の適合性判定(※4)、07年住宅瑕疵担保履行法(※5)、そういった多くの住宅制度が導入されました。05年に起きた耐震強度偽装事件も、情報を公開し、消費者を保護する動きのきっかけとなります。建築物の品質、取引の際の金融(住宅ローン)、長期的な保証といった、仕組みが補強されていった10年間でした。
ウェブ上で「物件を検索する」のが当たり前の時代に…
一方、住宅市場に目を向けると、インターネットを利用したサービスが一気に拡充しました。不動産はウェブ上での物件検索が一般的になり、民間企業が提供するポータルサイト(※6)や大手不動産仲介会社のホームページは、競って賃貸物件や売買物件を掲載するようになります。新築分譲マンションが発売されると、物件のブランド性や性能をアピールするホームページが、必ず制作公開されました。モデルルームや不動産会社に行く前に、まずインターネットで「物件を検索する」ようになったのはこの頃からです。その傾向は今後もますます「当たり前」になるでしょう。
さらに同時期、建築・不動産業界に、「不動産証券化(※7)」の波が押し寄せます。投資信託の不動産版であるREIT(リート ※8)のシステムがつくられたことで、数十万円あれば、誰でも不動産投資家としてその配当を得られる時代が到来したのです。しかも証券会社の窓口へ行かずとも、自宅のパソコンから不動産に投資できます。これは不動産を売買して、所有し、賃料収入を得る不動産投資の仕組みを根本的に変革する事件だったと言えます。
このように、さまざまな業界で、旧来のビジネスモデルは、新しいネットワークによる変革を迫られました。インターネットは、古く偏ったビジネスを枠組みから解体し、消費者に新たな価値をもたらしています。
※1 品確法
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の略。住宅の性能の表示基準・評価制度、住宅紛争の処理体制を整備する。また新築住宅の工事請負契約や不動産売買契約において、主要構造部や雨水侵入に関する瑕疵担保期間は十年以下にできない。供給者の品質向上を図る。
※2 性能表示制度
品確法の骨子の一つ。住宅の性能(構造、室内空気環境、高齢者等への配慮)について、表示の内容や方法を定め、評価書を発行する機関を設けた。利用は供給者の選択による。
※3 フラット35
住宅金融支援機構による、長期固定金利住宅ローン。多くの民間金融機関と提携しているので、多数の窓口がある。
※4 適合性判定
建築基準法の確認申請の構造計算について、第三者機関がチェックすることを義務化した。住宅では、規模の大きいマンション等で対象になることが多い。
※5 住宅瑕疵担保履行法
品確法で定める十年間保証について、住宅事業者が、倒産等でその責任を十分に果たすことができない時、一般購入者に不利益が生じないように
するため、瑕疵の補修の資金を確保するための法律。
※6 ポータルサイト
インターネットにアクセスする時に、玄関口となるウェブサイトのこと。不動産ポータルサイトでは「スーモ」「アットホーム」「ホームズ」を代表として、「R不動産」「SOHO東京」等、個性的なコンセプトのものを含めると、多数のサイトがある。
※7 不動産証券化
2000年の法改正による。投資規模を小口化し、新しい投資機会を作ることで、不動産市場への資金流入を促し、不動産市場の活性化を図る。これにより、不動産投資信託が可能になり、不動産の投資家、所有者、経営者が分かれることになる。
※8 リート(REIT)
不動産投資信託(Real Estate InvestmentTrust)の略。日本のリートは、J-REIT(ジェイ・リート)と呼ばれ、2016年現在、50以上の法人が設立、運営されている。個人投資家は、株式と同じように、それぞれの商品を選択、購入し、定期的に分配金を受け取ることができる。