短期のリターンにとらわれず、先を見据える
前回の続きです。
投資期間とリターンに関しても注意が必要です。日本人、それに中国人もその傾向がありますが、短期間での絶対リターンを求めがちです。指数対比ではなく、絶対利回りにこだわるのもその表れです。
しかし、欧米の富裕層は日々のリターンはさほど気にしません。20年、30年先を見据えて、資産を守るという目標がはっきりしているので、たとえリーマン・ショックのような金融危機が起こっても慌てません。
また、「出口戦略」といったことも考えません。出口戦略ということ自体、短期間での絶対リターンを求める発想からくるものでしょう。
流動性の低いものには投資しない
さらにもう一つ、投資対象の流動性にもぜひ、留意してください。この留意点はリーマン・ショック後に特に意識されるようになりました。
基本は、流動性の低いものには投資しないということです。流動性の低いものとは、具体的にいうと不動産などの実物資産です。実物資産はなんとなく安心感があるというので好まれますが、むしろ金融危機などの際、必要な時に売るに売れず、大きな損失の原因になります。
逆に、流動性が高い資産の代表が株式や債券です。「株式や債券はただの紙切れになる」と日本ではよく言われますが、そんなことはありません。
金融市場が高度に発達し、グローバル化した現代においては、何百兆円というお金が日々、絶え間なく取引されています。そこで取引しやすいのは、一つひとつの評価が難しい実物資産ではなく、標準化され数値化された株式や債券なのです。
個人的には、5億~10億円クラスの資産家であれば、ポートフォリオにおいて実物資産は一切持たず債券投資または一部株式や派生商品投資を含む程度で十分だと思います。
富裕層がまず考えるのは、5%を超える超過リターンです。若くてリスク許容度の大きな富裕層は10%程度を狙うのも可能でしょう。日本国内で、リスクを抑えながらそれだけのリターンを得ることは不可能に近いですが、海外であればまだまだ十分可能です。なお、50億~100億円クラスの資産家になれば、分散投資のために多少、実物資産を組み込むことを検討するべきかもしれません。