フェリカ携帯を使ったクレジット決済が可能に
QT‐net倶楽部の会員がネットワーク対応精算機を利用してキャシュレス精算をしたり、ポイントを貯めるには、個人が認証できる会員証のようなものが必要になる。そこで一ノ瀬が着目したのが、「お財布携帯」とも言われるフェリカ携帯だった。
「フェリカ携帯にはICチップが搭載されているが、それで個人認証ができないだろうか」
一ノ瀬のこうした着想をかたちにするのが、三代澤たち開発部のメンバーの仕事だ。
「われわれの開発テーマというのは、基本的にアイデアは一ノ瀬から出てくるんですね。非常にハードルが高いアイデアばかりなのですが、一ノ瀬としては常に『絶対実現できる』という信念がありますから、われわれとしても、なんとかして実現させなければなりません。
フェリカ携帯を使ってクレジット決済までつなげたいということで、ICチップの番号を専用リーダーで読みこみ、会員にひもづけるところまではできたのですが、そのあとがけっこう苦労しました。
クレジットカードでの決済をどう実現するかというところでは、カード会社との折衝が必要になりました。最初は、そういうモデルケースはないから受けられないと言われてしまいました。その後、紆余曲折があって、最終的にはある決済代行ベンダーの協力を仰いで、なんとか実現にこぎつけました」
三代澤に言わせると、一ノ瀬は非常に運が強く、何かを成し遂げようとすると、格好のタイミングでその実現に力を貸してくれる人との出会いがある。当の三代澤もそのひとりであることは間違いないが、一ノ瀬には人を引き寄せる不思議な力があるのかもしれない。
なお、フェリカ携帯での登録は駐車場で簡単に行え、利用に応じてポイントも貯まるようになっている。
敷居が高い『Suica』との交渉であったが…
アイテックでは、その後も支払い手段の多様化を推し進め、2011年9月からは、アイテックのネットワーク対応精算機が設置されている駐車場では交通系電子マネーでの決済も可能になった。このときも三代澤がプロジェクトリーダーとして、鉄道会社との交渉などにあたっている。
「JR東日本の『Suica』などは敷居が高くて、NDA(守秘義務契約)を結ぶのもなかなかすんなりとはいかないと聞いていたのですが、当社はちょうど2011年にPマーク(プライバシーマーク)の管理者になっていたことから、Pマークの管理基準などを掲げながら万全なセキュリティ対策を講じていることを強調したところ、思いのほかすんなりとNDAを結ぶことができました」
アイテックではその後も、ユーザーファーストの視点から、精算方法の多様化への対応を推し進めた。前章(※書籍参照)ですでに紹介したように、2013年にはスマートフォンから精算できるアプリを開発し、2015年にはリアルタイム口座振替サービスが開始されるなど、ユーザーの利便性はますます高まっている。