他業種から大手企業が進出するコインパーキング業界
アイテックは駐車場設備機器メーカーなので、主な顧客は駐車場運営会社となるが、その多くはリピーターで、新規開拓のための営業活動を積極的に行うということはあまりないという。
「駐車場設備機器は、『買ってください』と言って売れる商品ではありません。そもそも駐車場がないことには始まりませんからね。そのかわり、自分のお客様をしっかりつかまえていれば、リピーターとして当社の製品を納入させていただけます。勢いがある取引先からは、何もしなくても注文が入ってくるのです(笑)。
いま、コインパーキング業界には他業種から大手企業がどんどん進出してきていますし、新規に参入してくるところほど新しいものを受け入れることに抵抗がないようで、ロックレス駐車場システムを評価してくれるところが多いですね。それには、『既存の駐車場とは違う』ということをアピールしたいとの判断もあるようです」
こう語るのは、アイテック営業部部長の落合正男だ。落合によると、コインパーキングを古くから手がけている人ほど、ロックレス駐車場の話をしても「いまのままで不自由していないから」との言葉を決まって返してくるという。
アイテックでは、そうした顧客にも対応すべく、従来型のロック板も扱っているが、発売から6年が経過したいまではロックレス駐車場システムのよさがじわじわと認識され始めたからか、新規の駐車場に関しては、ロックレス方式の導入比率が年々高まってきているという。その結果、現在では、全国的に見れば6対4でロックレス駐車場システムがやや上まわっている程度だが、東京ではすでにロックレス駐車場システムが7~8割を占めるまでになっている。
「地方の運営会社さんの場合は、できるだけコストをかけたくないというところが多いのです。ロック板方式もロックレス方式も導入コストはさほど変わりませんが、ロックレス方式ではデータの管理費としてランニングコストが多少かかりますからね。1時間100円しか取れない事業に、そうそうランニングコストはかけられないというわけです。特に関西ではそうした声がよく聞かれます」
ただ、特に大手企業の場合はトラブルを嫌がる傾向があるからか、ロックレス方式の導入に前向きなところが多いようだ。大手が動くと、中小がそれに倣おうとするのは世の常で、流れは確実にロックレス方式に向かい始めていると言えるだろう。
雪の多い地方でロックレス方式が歓迎される理由
「それでも、現状では、全駐車場に占めるロックレス駐車場の比率は2~3%にすぎないでしょう。でも、この数値は、イノベーターと言われるところまではきていると思います。この先、普及率が1割を超えると、おそらく急激に伸びると思いますね」
最近は、メディアやウェブサイトなどを見て、従来の取引先以外の駐車場運営会社からの問い合わせも多く、落合としては十分な手応えを感じている。
特に雪の多い地方では、ロックレス方式はおおいに歓迎されている。アイテックの顧客も、新規に導入する場合はロックレス方式を採用するケースが圧倒的に多いという。
「北海道は100%ロックレス方式ですし、東北や甲信越など雪が多い地方では、ほとんどロックレス方式になってきました。降雪地域の駐車場では、従来のロック板方式だと除雪作業に年間30万~40万円かかりますが、ロックレス方式にすることでコストを抑えることができます」
雪の多い地域に限らず、クルマを足代わりにしている女性ドライバーや高齢ドライバーが多い地方でも、停めやすさという点が口コミで伝わり、利用者が増えれば、ほかの駐車場も導入せざるをえなくなるだろう。
落合によると、最近は、土地オーナーが駐車場運営会社に土地を貸すにあたり、ロックレス駐車場にすることを条件としてつけてくるケースも増えているという。土地オーナーとしては、自分の土地でトラブルが起きてほしくはないし、ロックレス駐車場なら防犯カメラが標準装備されているので安心感につながるからだろう。店舗型駐車場でも、運営会社に対しロックレス方式を指定するところが増えていることを考え合わせると、この先、駐車場のロックレス化はますます加速するのではないだろうか。