東京オリンピックが鉄骨造、RC造の資材高騰の引き金に
今、鉄骨造とRC造は建築費が高くなる一方です(2017年2月現在)。私の会社でもかつてRC造の建築を行っていたことがありますが、そのころに比べて3割程度、費用が高くなっている印象です。鉄骨造やRC造の高騰には理由があります。
ひとつは建築資材の値上がりです。鉄骨造とRC造を比べると、鉄骨造のほうが安いのが一般的ですが、鉄骨の値上がりにともなって、建築費の差はどんどん縮まっています。ではなぜ建築資材が値上がりしているかというと、東京オリンピック開催の影響で、建築需要が高まり、資材不足が慢性的に発生、職人さんも足りていない状況だからです。
景気が悪かった時代、鉄骨などを加工する工場が経営難となり、次々と閉鎖してしまいました。そこからの突然のオリンピック需要ですから、加工する工場が減っている現在、どこもフル稼働で資材の製造にあたっています。
このような景況が、資材高騰の引き金となっています。
オリンピック需要に影響されない木造建築の工場、職人
もうひとつ、鉄骨造とRC造の建築費が高くなっている要因があります。
オリンピック需要でゼネコンは絶好調。これまではひとつの案件に対していくつものゼネコンが競い合っていたのですが、今は需要のほうが高まっているため、ゼネコン側が仕事を選べるようになってきました。
そのためゼネコンは安い仕事を受けず、より利益の上がる仕事だけに力を注いでいます。この事態が結果的に、鉄骨造やRC造の値上がりを引き起こしているのです。
私の会社でも一棟、ゼネコンに発注して鉄骨9階建てのテナントビル建設を計画しています(2017年2月現在)。やはりこれも、こちらが想定していたよりも3割ほど高い見積もりです。鉄骨造のビルを建てる際に困ったのは金額だけではありませんでした。「待たされる」のです。
鉄骨の資材を加工する工場はパンク寸前の稼働状況ですから、私の会社のビルに資材が回ってきません。着工にまでなかなかこぎ着けないのです。しかしその間にも、土地部分の借入の返済はスタートしています。
これは会社で扱う事業だからまだいいのですが、個人のオーナーだとしたら気が気ではありません。家賃収入の一部を返済に充てていくというスタイルが根本から崩され、建物が完成してアパート経営が始まるまでは自腹を切る羽目になります。
対して木造ですが、オリンピック需要からはいい意味で蚊帳の外にいます。工場も違えば、工事に関わる職人さんたちもまったく違う人たちです。かかる費用に今も昔もさほど差はありません。
今、アパート経営をするなら、間違いなく木造です。競争の激しい鉄骨造やRC造だと、余計な出費やリスクを背負うことになるでしょう。