十分な利益がなく、本社からの支援も得られず…
ジリ貧が進むA店では営業会議で毎回「出すか・取るか」が大きな問題となりました。出すと遊技客が増え稼働が上がりますが、利益が取れません。とはいえ、必要な利益を取ると稼働が下がるのではという不安が大きく、取りきれないのです。
大まかにしかデータを見ていなかった店長はこのジレンマを解消する方法を思いつくことができず、既存客の減少を恐れ、結局、利益が取れないと知りながらも出し気味で営業することしかできませんでした。
利益計画の達成率が低い状態が続くと、本社からの信頼も失われます。十分な利益がなく本社からの支援も得られないA店は集客につながる仕掛けを打つこともできず、ジリ貧がさらに悪化していったのです。
売上と粗利の目標設定を「機種ごと」に変更
「出すと稼働が上がり、取ると稼働が下がる」というジレンマは多くのホールが抱える共通の悩みです。A店ではデータの分析や活用に対する店長の理解を進めることで、このジレンマの解消に成功しました。
データを可視化して長期的な流れを追うなど、営業状態をしっかり把握できるようになった店長は「締めると稼働が下がる」という不安をクリアして、必要な粗利額を確実に取れるようになったのです。
具体的には、これまで「部門ごと」だった粗利の管理をより細かい「機種ごと」に変更しました。売上と粗利の目標設定も「機種ごと」にしたため、どの機種が取れ過ぎているのか、あるいは必要と考えている粗利額が取れていないのか、ハッキリわかるようになりました。データが明確になれば不安もなくなり、戦略に基づいて「出す・取る」という判断ができるようになります。
たとえば、A店ではそれまで稼働のいい機種からより多くの利益を上げようとしていました。稼働の悪い機種から必要な利益額を取ろうとすると非常に高い利益率となるため、「いくら何でも・・・」と二の足を踏んでいたのです。
ところが稼働のいい機種はホールにとって強い機種──「強み」です。戦略への応用で知られるランチェスターの法則では「弱者は強みに戦力を集中するのが勝利の絶対条件」とされていますから、稼働のいい機種は出し気味にして育て、先がない稼働の悪い機種で取るのがジリ貧状態のA店にとっては正しい戦略と言えます。
もちろん日によって状況は変わりますから、目標の達成率ごとに「出す・取る」の判断を細かく行わなければなりません。しかし、それまでは「1円は出し、4円は取る」など大まかだった戦略をきめ細かなものに変えることで、長期的な稼働の落ち込みを心配することなく十分な利益を確保できるようになりました。また、営業姿勢も筋のとおったものとなり、店舗スタッフや本社営業部からの信頼にもつながるなど、大きな効果を得られたのです。