場当たり的な対策が続けば客足は遠のく
データは結果が数値化されたものです。長年にわたる営業の積み重ねに、例えば当日配布された折り込みチラシの効果等が重なって、本日の稼働という結果がデータとして出てくるのです。
「覆水盆に返らず」というように、結果は変えることができません。結果を嘆いても無意味です。しかし、A店ではしばしば営業部長と店長が次のような会話を交わしていました。
営業部長「稼働がずいぶん落ちているな・・・。やはり玉粗利が高過ぎるんじゃないか?」
店長「しかし、下げると目標の粗利額に届きません」
営業部長「稼働が上がれば取れるだろう」
店長「玉粗利を下げたからといって、上がるかどうかは・・・」
問題点がいくつも潜む会話ですが、最大の間違いは「稼働が落ちた」というデータに対して何も考えずに「玉粗利を下げる」という対策を打とうとしている点です。結果に反応しているだけで戦略的な考えは皆無です。場当たり的な対策が続くと、遊技客は「何を考えて営業しているのかまったくわからない」と考えるようになり、ホールから足が遠退いてしまいます。
原因の追究なしに対症療法を施すのは危険
解決策:原因と結果の法則を理解する
A店が右往左往してしまう原因は主に2つありました。「データを見て原因を探す習慣」がなかったことと「結果は作るもの」という意識がなかったことです。
営業部長と店長の会話には「なぜ稼働が落ちたのか」という分析の過程がありません。病気の治療にたとえるなら、「頭が痛いので鎮痛剤を」というのと同じです。プロである医師は他にどうしようもないという特殊な状況以外では、このような治療はしません。頭痛には必ず原因があるからです。
風邪か、あるいは脳内出血や脳腫瘍といった重い病気の予兆か──風邪程度なら鎮痛剤でも問題ありませんが、脳内出血や脳腫瘍を見逃せば命に関わります。原因の追究なしに対症療法を施すのは非常に危険なので、必ず原因を探らなければなりません。「いつから痛いのか?」「どこがどんな風に痛いのか?」「ものが二重に見えたりしないか?」「頭を打っていないか?」など、さまざまな情報を患者から引き出し、過去の症例から仮説を立て、検査によって原因を特定します。治療や投薬を行うのは、あくまで原因が特定されてからのはずです。
営業も同じです。大手ホールはそれを知っているので日々の結果に一喜一憂しませんが、A店の店長はその場で対症療法を考えるので、資金と労力が無駄に費やされていました。
結果を作るために先を読み、考える
解決策:「原因」を知るためにさまざまな可能性を想定してみる
結果が出てから反応する習慣が身に付いている店長は、まずその考えをリセットする必要があります。
結果を作るためには常に先を読み、考えることが必要です。たとえば「今月は○○があるので3週目に稼働が落ちそうだ」という見通しがあれば、その前にすべきことを検討できます。「2週目に入替をして、落ち込みを抑えよう」「落ちる週に備えて利益を確保しておこう」などと計画することで、落ち込みを小さくできるのです。
もちろん、事前に策を講じても意図したとおりにならないことはあります。しかし、そんな時にも策が功を奏さなかった原因を探すのです。
たとえば、稼働が落ちたのは「玉粗利」に原因があるからだと考えて利益率を落としたのに、実際には稼働が戻らなかったという場合であれば、次のような内部要因あるいは外部要因が影響している可能性があります。
【内部要因】
●遊技客は回転数に不満を感じている
●遊技客は出玉に不満を感じている
●ホールの機種構成に魅力が感じられない
【外部要因】
●連休後で遊技客の懐具合に余裕がなかった
●道路工事があり人通りが遮られた
●雨の日が多かった
稼働が落ちた原因が内部要因なら対応策を考える意味はありますが、外部要因なら新台入替や「出す」という対策をしても無意味です。ここは無駄に資金を使わずジッと待つのが最良と判断することができます。
このように、原因をしっかり把握した上で対処法を考えるようになったA店は、貴重な資金を無駄遣いするケースが激減しました。