売上が伸びても利益が下がる場合は、経営の危険信号
前回の続きです。
稼働率についてのデータ分析によって、競合ホールとの相関関係を見出すことに成功したA店店長は、次にA店における「売上」「利益」について数年来のデータを見ることにしました。
A店では、おおむね「増収・減益」という傾向が続いていたのですが、私がそれを「最悪の状態」と指摘しても、店長や営業部長の反応は鈍く「すぐに対策が必要」とは考えませんでした。
通常、短期的な変化であればいずれ元に戻ります。しかし、長期的な変化というのは、ホール営業そのものに問題が隠れているサインであり、どこがまずいのかを探り出して一刻も早く対応しなければなりません。
売上が伸びているものの利益が下がり続けているという状態は、パチンコホールの運営にとって非常に重要なサインです。
営業方針変更の決断が遅れる「増収・減益」という状況
では次の4つの中でもっとも危険な状況はどれでしょうか?
①増収・増益
②増収・減益
③減収・増益
④減収・減益
A店店長の答えは④の「減収・減益」、営業部長の答えは③の「減収・増益」でした。
売上も利益も下がる④が最悪に思えるのは理解しやすいところです。「遊技客が減り続け、その分利益も下がっている状態なので救いようがない」というのが店長の説明でした。一方、③の減収・増益を最悪と考えた営業部長は「売上が下がっている中でも利益を取っていることになるので、稼働が下がってしまう」ことを理由としてあげました。
しかし、いずれも間違いです。右記の4つを評価する時には、ホールと本社が「その後どのような営業を行えるか」という視点で分析することが欠かせません。①の場合、増収・増益をもたらしているわけですから、ホールも本社も「今のホール営業は正解だ」と判断できますし、実際その考えに間違いはありません。
店長が「最悪」と考えた④は売上も利益も落ち込んでいるので、一見救いようがなさそうですが、少なくとも「このままではダメだ」という点で、ホールと本社の考えが一致するという利点があります。「急いで改善しなければ!」という方針を共有できるのです。
営業部長があげた③の減収・増益は少なくとも「利益は取れている」という利点があります。利益を原資に使ってさまざまな仕掛けをすることができるので、営業部長が心配する稼働の落ち込みに対して、対策を打つことが可能です。
従って最悪なのは②の増収・減益ということになります。売上が増えているため、現場は「この方針がいい」と判断します。実際には利益が取れていないので、営業方針を変えなければならないのに、その判断が遅れてしまうのです。
A店はまさにその典型的な状態でした。取るべき対策がどんどん遅れていったのです。