今回は、第二次世界大戦後に発足した「IMF体制」の概要を見ていきます。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

ドルが「世界の基軸通貨」になった経緯

第二次世界大戦後、金本位制をとる国はなくなりました。国内的には管理通貨制度が採用され、中央銀行は金との交換をしない不換紙幣を発行するようになります。これにより、中央銀行は金の保有量とは関係なく、自由に通貨量を増減し、景気調整ができるようになりました。

 

一方、国際的な通貨制度のあり方については、1944年にブレトンウッズ協定が結ばれ、IMF(国際通貨基金)IBRD(国際復興開発銀行)という二つの機関が設立されました。これによりブレトンウッズ体制、またはIMF体制と呼ばれる戦後の国際金融体制が確立しました。

 

[図表1]ブレトンウッズ体制

IMFの最大の目的は「固定相場制」の維持

IMFの最大の目的は固定相場制の維持でした。これは為替レートの切り下げ競争が第二次世界大戦の一因となったことに対する反省から生まれたものです。世界恐慌に際して列強がとった政策は、為替レートを切り下げることによって自国の輸出を伸ばし、恐慌を乗り切ろうとするものでした。

 

これを近隣窮乏化政策といいます。しかし、為替レートを切り下げると相手国も報復措置として為替を切り下げてきます。その結果、経済対立が深刻化し、第二次世界大戦の原因の一つとなりました。IMFはこのようなことを再び起こさないようにするためにつくられた組織です。

 

戦後、世界の金の半分以上を持っていたアメリカは、ブレトンウッズ協定により、金1オンス(約31g) = 35ドルでドルと金を交換することを約束しました。そして、各国の為替レートは、そのドルを基軸通貨として固定されました(図表2)。こうして成立した国際通貨体制をGATTと合わせてIMF・GATT体制といいます。これにより、「為替切り下げ競争」と「関税引き上げ競争」という愚を二度と起こさないための各国の協力体制ができあがったのです。
 

[図表2]金・ドル・各国の通貨の関係

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

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南 英世

ベレ出版

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