今回は、19世紀~1920年代までの金本位制の概要について解説します。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

金本位制から固定相場制、そして現在の変動相場制へ

国家間で行なわれた貿易や金融取引の決済に使用される通貨を国際通貨といいます。また、国際通貨を使った決済制度や国際収支の調整方法のことを国際通貨制度といいます。これまで国際通貨制度は、金本位制固定相場制、そして現在の変動相場制へと移行してきました。

 

[図表1]国際通貨制度のあゆみ

法的に初めて「金本位制」を実施したのは19世紀の英国

現在、国際取引の決済として使われているのは主としてドルです。しかし、よく考えてみると、ドルは単なる「紙切れ」にすぎません。もし、何らかの理由でアメリカの信用がなくなれば、ドル紙幣はあっという間に価値を失います。では、国の信用力に関係なく、いついかなる時代でも国際的に受け取ってもらえる通貨はあるのでしょうか。

 

実は一つだけあります。それが金(=gold)です。金は美しくてそれ自体に価値があります。あまりたくさん採れないので価値が目減りしません。また、分割可能であり、変質しません。こうした理由から、金は次第に取引の決済手段として使用されるようになり、金本位制が確立していきます。金本位制が法的に初めて実施されたのは1816年のイギリスです。ただし、国内でいちいち金を使用することには多くの不便をともなうので、実際には紙幣が使われました。もちろん、その紙幣は単なる紙切れではなく、中央銀行に持って行けばいつでも金と交換してもらえる兌換紙幣でした。

 

日本で金本位制が採用されたのは、1897~1917年と1930~1931年です。当時使われていた拾円紙幣には「此券引換に金貨拾円相渡可申候」(このけんひきかえに、きんかじゅうえんあいわたし、もうすべくそうろう)と書かれていました。

 

[図表2]1930年に発行された兌換紙幣(日本)

 

金本位制には、通貨の価値を安定させることができる(=インフレになりにくい)など、いくつかの長所がありました。しかし、世界恐慌をきっかけに金本位制を離脱する国が相次ぎます。なぜなら、金本位制の下では、発行できる通貨量は中央銀行の保有する金の量に制限され、恐慌になっても通貨量を増やすことができず、いまでいう適切な金融政策をとれなかったからです。そのため、1930年代に入って、各国は一斉に金本位制から離脱していきました。

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

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南 英世

ベレ出版

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