今回は、国際収支から「国の発展段階」について読み解いていきます。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。
国際収支には「国の発展段階」に応じた特徴がある
前回の続きです。
日本はこれまで、経常収支黒字・金融収支プラスであることが多く、日本の対外純資産(= 対外資産残高 - 対外負債残高)は約363兆円(2014年末)と、1991年以来24年連続世界一となっています。日本は長いあいだ、経常収支の黒字(おもに貿易収支の黒字)で稼ぎ、外国に直接投資や証券投資を行なってきました。
一般に国際収支は、国の発展段階に応じて、図表1のような特徴を持ちます。これを国際収支発展段階説といいます。
[図表1]国際収支発展段階説
「成熟した先進国のパターン」に移行しつつある日本
日本の国際収支は、かつては毎年10兆円余りを貿易で稼ぎ出し、海外に投資するという典型的な先進国のパターンをとっていました。
しかし、2011年から日本の貿易収支が赤字になったことや、近年、第一次所得収支の黒字が急速に膨らんでいることなどから、日本は成熟した先進国のパターンに移行しつつあるといえます。
[図表2]日本の経常収支の推移
大阪府立天王寺高等学校
非常勤講師
1951年生まれ。金沢大学卒。金沢大学助手を経て、1983年より大阪府立高等学校社会科教諭。2006年より指導教諭として、新採教員および中堅教員の授業力向上のために助言および師範授業に取り組む。「授業とは感動を与えることである」という信念のもと、社会現象の本質を考える授業を実践。著書として、『意味がわかる経済学』『学びなおすと政治・経済はおもしろい』、高等学校用教科書『政治・経済』『現代社会』『社会と情報』など多数。ホームページ http://homepage1.canvas.ne.jp/minamihideyo/
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