今回は、株式取引における「株式市場」の役割と仕組みについて見ていきます。※本連載は、公的年金・企業年金運用会社の元社長で、現在はI‐Oウェルス・アドバイザーズ株式会社代表取締役社長・岡本和久氏の著書『公的・企業年金運用会社の元社長が教える波乱相場を〈黄金のシナリオ〉に変える資産運用法 かんたんすぎてすみません。』(きんざい)の中から一部を抜粋し、株式会社と株式市場の仕組みをわかりやすく解説します。

「価格優先」「時間優先」の原則に基づいて取引

前回の続きです。

 

(3)株式会社

 

日本には115万社ぐらいの株式会社が存在するといわれる。株式市場で株式が取引されるようになるためには資格審査に合格しなければならない。晴れて株式が取引所に上場され、市場での取引が可能になる。2015年12月時点で3,500社が日本取引所グループに上場されている。さらに、このなかで第1部市場に上場しているのが1,930社だ。

 

東京証券取引所では、1日平均で2014年に2.6兆円、2015年1月~10月に1日平均3.0兆円の取引が行われている。取引は、買い注文のなかで最も価格の高い注文を優先させるという「価格優先の原則」が最初にあり、次いで同じ値段の注文については早く出された注文を優先するという「時間優先の原則」に基づいて取引が行われる。この二つの原則に基づいて、株式の価格は需要と供給によって変化する。世界中の出来事が投資家の株式に対する需要と供給に影響を及ぼす。そのために株価は日々、変動している。

 

株式市場全体の動きを示すために株価指数が存在する。代表的なものとしては東証1 部の全銘柄を時価総額の大きさによって加重平均した「東証株価指数(TOPIX)」、日本経済新聞社が算出する代表的な225銘柄の平均株価に基づいて算出される「日経平均株価」などがある。また、アメリカでは「ダウ工業株平均」や「S&P500指数」などが有名だ。各国市場は独自の代表的指数を発表している。また、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(以下、MSCI)など、同一基準で世界の株式市場の指数を算出している。

注文方法は「成り行き注文」と「指し値注文」

(4)発注の仕方

 

株式を売買するためには、証券会社に口座を開かなければならない。証券会社には対面型の証券会社とネット証券がある。対面型の場合はセールスマンが対応して発注を手助けしてくれたり、取引のアドバイスをしてくれたりする。ネット証券には、そのようなサービスはなく、基本的にパソコンなどを通じて取引をする。その代わり手数料は大幅に安い。

 

取引所に上場されている株式など有価証券の名称を銘柄という。例えばトヨタ自動車株式会社の株式の銘柄はトヨタ自動車だ。すべての銘柄にはコード番号がついている。トヨタ自動車であれば7203である。まず、取引をしたい銘柄のコード番号をホームページなどで確認する。そのうえで、売買の別、株数を証券会社に明確に伝える。さらに、売買の価格について証券会社に指示をする。

 

成り行き注文というのは値段を指定せずに売買する注文方法だ。一方、指し値注文は売買を希望する値段を指定する方法である。後の場合は値動きによっては注文が成立しないこともある。また、注文の期限についても当日限り(本日中)、今週中などの指定ができる。注文を出して取引が成立すれば証券会社から約定報告がくる。そして、決済となる。

 

投資経験の少ない人は、基本的に次に述べる投資信託を利用するのがよいと思う。普通、投資信託は取引所で売買することはできない。しかし、これも次節に述べる上場投資信託などを利用する場合には取引所での売買となるので、ここで解説したぐらいは株式の売買がどのように行われるかを頭に入れておいたほうがよいであろう。

公的・企業年金運用会社の元社長が教える 波乱相場を〈黄金のシナリオ〉に変える資産運用法 かんたんすぎてすみません。

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岡本 和久

きんざい

著者は、機関投資家のトップとして、13年間、公的・企業年金の運用に携わってきた。 本書では、機関投資家として培ったノウハウを開示し、誰でも簡単にできる資産運用法を教示する。 運用を知り尽くした著者は、「早く、たく…

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