株式会社の起源は17世紀初頭の東インド会社
本格的な株式会社の起源は、17世紀初頭にイギリスやオランダで設立された東インド会社だといわれる。15世紀から「大航海時代」が始まり、新航路、新大陸が発見されるようになってきた。当時、アジアの香辛料、お茶、繊維などがヨーロッパでは非常に高く売れたので、イギリスやオランダの富裕層が資金を出し、船、船長、船員を手配して、これらを買い出しに行くビジネスを始めた。船が途中で沈没したり、海賊に襲われたりする危険はあったが、その危険を相殺してももうかるビジネスだったのだ。
無事に航海が終われば、収益は出資者に配分されていたが、そのうち、事業が継続的に営まれるようになり、利益の一部のみを現金で受け取り、残りは会社のなかに残しておくようになった。このプロセスは前述のパン屋のケースと同じだ。そして、会社の持ち分を表す株式が発行され、さらに株式を売買する市場が整備されるようになった。また、株主の会社に対する権利も明確に定義されるようになった。つまり、現代の株式会社は、約400年以上の時代を経てさまざまな工夫が加えられ練り上げられてきた制度なのだ。
株式会社の資金は「借りてきたお金」と「株主のお金」
株式会社が事業を営むためには工場などの資産が必要である。資産をもつためには資金が必要だ。その資金は2種類しかない。つまり、借りてきたお金と株主のお金である。
借りてきたお金は金利を支払い、期限がきたら返済しなければならない。借りてきたお金には大きく分けて2種類がある。銀行からの借入れと債券を発行して調達した資金だ。
銀行から借り入れるお金の原資は、銀行に預けられた預金だ。銀行は預金者の資金を集めて安全だと思われる先に融資を行う。この場合、預金者がどこに融資をしてほしいという意向は反映されない。それゆえに、このようなかたちの金融を間接金融という。間接金融の場合には、貸付先が倒産した場合などのリスクは銀行が負うことになる。
同じ借入金でも債券の場合は事情が異なる。債券を発行する企業は、幅広い投資家層に対して債券を募集する。投資家は、自分の資金を使ってもらいたい企業を自ら選ぶ。つまり、自分の資金をどの会社に融通したいかを自分で決める。そして、そこに発生するリスクは自ら引き受ける。
株式についても同様で、どの企業の株主になるかは投資家が自分で決める。当然、投資に伴うリスクも投資家の自己責任ということになる。債券でも株式でも投資家は投資先を自分で選び、そのリスクを受け入れる。このような金融方式は直接金融といわれる。
全資産からすべての借金を引いた額が、株主のお金
企業は借りてきたお金と株主のお金で資産を保有し、それを活用して商品を販売し、売上げを得る。売上げから製造原価や販売・管理の費用などが支払われる。
ここで重要なことは、借りてきたお金に支払う金利も経費として支払われるということだ。すべての経費を支払ったのち、税金を納め、役員に対する報酬を支払った残りが、株主が得る利益となる。その利益の一部は配当金として支払われ、残りは内部留保となり次年度以降のビジネスで活用される。株主の受け取る配当金や企業内に残す内部留保はあくまで金利を支払った後に残ったものなのだ。
企業の全資産は、借りてきた資金と株主の資金によって保有されている。それでは、お金を貸している人と株主とでは、どちらが先に会社の資産に対する権利を保有しているのだろうか。答えはお金を貸している人だ。株主が企業のなかに保有している資産とは、すべての借金を返済した残りということだ。
つまり、株主が毎年得ることができるのは、売上げから金利を含むすべての費用を差し引いたいわば残り物だ。同じように株主が企業に保有しているのは、全資産からすべての借金を差し引いた残り物ということになる。この残り物を株主資本という。
株式を通じて保有するのは残り物だ。残り物ゆえにその量が増減する。それがリスクであり、そのリスクがあるから大きな収益を得るチャンスがある。その意味では「残り物には福がある」かもしれない。