今回は、スミス、ケインズ、マルクスといった過去300年の流れから経済学を見ていきます。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

資本主義の問題解決策として生まれた「社会主義」

恐慌、失業、貧富の差の拡大、独占、労働問題といった社会問題とどう取り組むのか。経済学はこうした社会問題をいかに解決するかという困難な課題との格闘の歴史であったといえます。

 

下記図表を見てください。過去300年間の経済学の流れが単純化され図式化されています。ここに描かれたスミスケインズマルクスの3人は、経済学者のなかでも別格の存在だと考えてください。極端にいえば、この3人の考え方さえわかれば、現在世界で行なわれている経済政策の大半がわかるといっても過言ではありません。

 

[図表]経済学の系統図

『政治・経済』第一学習社を参考に作成
『政治・経済』第一学習社を参考に作成
 

まず、経済学の創始者であるアダム・スミスですが、彼は、資本主義はたいへんすぐれた性質を持っているから、放っておけば勝手に発展していくと考えました。実際に、18世紀から19世紀にかけて生産力は飛躍的に伸びました。しかし、残念ながらスミスは楽観的すぎました。資本主義は、その後、恐慌、失業、貧富の差の拡大、独占など、さまざまな社会問題を引き起こしてしまいます。

 

その後、こうした問題を解決する方法として二つのことが考えられました。一つはマルクスによるもので、彼は、資本主義が生み出した弊害は資本主義の下では解決できないとして、資本主義を否定し、社会主義国家の樹立を説きました。

資本主義の欠点を修正する考え方「修正資本主義」

一方、もう一つはケインズが提案した方法で、資本主義はたしかに欠点があるが、欠点を修正すればまだまだ使えるというものでした。

 

資本主義の欠点を修正し、恐慌などの問題を解決しようとする考え方を修正資本主義といいます。修正資本主義の流れは、その後アメリカ、イギリス、フランス、日本などに受け継がれていきます(→ケインズ経済学については筆者著書『意味がわかる経済学』(ベレ出版)にて詳述)。

 

そして、20世紀は資本主義のほうが良いと主張するアメリカ陣営と、社会主義のほうが良いと主張するソ連陣営がお互いに譲らず、冷戦を展開することになったのです。冷戦は1991年にソ連が崩壊するまで続きました。

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

意味がわかる経済学

南 英世

ベレ出版

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