資本主義の問題解決策として生まれた「社会主義」
恐慌、失業、貧富の差の拡大、独占、労働問題といった社会問題とどう取り組むのか。経済学はこうした社会問題をいかに解決するかという困難な課題との格闘の歴史であったといえます。
下記図表を見てください。過去300年間の経済学の流れが単純化され図式化されています。ここに描かれたスミス、ケインズ、マルクスの3人は、経済学者のなかでも別格の存在だと考えてください。極端にいえば、この3人の考え方さえわかれば、現在世界で行なわれている経済政策の大半がわかるといっても過言ではありません。
[図表]経済学の系統図
まず、経済学の創始者であるアダム・スミスですが、彼は、資本主義はたいへんすぐれた性質を持っているから、放っておけば勝手に発展していくと考えました。実際に、18世紀から19世紀にかけて生産力は飛躍的に伸びました。しかし、残念ながらスミスは楽観的すぎました。資本主義は、その後、恐慌、失業、貧富の差の拡大、独占など、さまざまな社会問題を引き起こしてしまいます。
その後、こうした問題を解決する方法として二つのことが考えられました。一つはマルクスによるもので、彼は、資本主義が生み出した弊害は資本主義の下では解決できないとして、資本主義を否定し、社会主義国家の樹立を説きました。
資本主義の欠点を修正する考え方「修正資本主義」
一方、もう一つはケインズが提案した方法で、資本主義はたしかに欠点があるが、欠点を修正すればまだまだ使えるというものでした。
資本主義の欠点を修正し、恐慌などの問題を解決しようとする考え方を修正資本主義といいます。修正資本主義の流れは、その後アメリカ、イギリス、フランス、日本などに受け継がれていきます(→ケインズ経済学については筆者著書『意味がわかる経済学』(ベレ出版)にて詳述)。
そして、20世紀は資本主義のほうが良いと主張するアメリカ陣営と、社会主義のほうが良いと主張するソ連陣営がお互いに譲らず、冷戦を展開することになったのです。冷戦は1991年にソ連が崩壊するまで続きました。