世界遺産のアンコールワット遺跡に世界各地から観光客が集まり、外国企業による縫製産業への活発な投資で経済成長が続くカンボジア。他の成熟した東南アジア諸国よりも、まだまだ成長の余地があると考えられるカンボジアは、不動産投資家からも注目されています。そこで、カンボジア不動産投資で知っておきたい基礎知識や注意点をご紹介します。
■カンボジアの不動産投資条件と不動産市場
◇不動産市場の見通し
カンボジアは1998年からのフン・セン政権で政治が安定し、積極的な外資誘致で2011年以降は年平均7%の経済成長を続けています。工業化が進んでいるタイやベトナムなどの近隣の東南アジア諸国よりも人件費がまだ安いため、現在は観光産業と縫製産業が中心です。今後さらに機械系製造業への外国企業の進出により、外国人駐在員向けの高級住宅市場も伸びる可能性があります。また首都への人口集中も進んでおり、住宅建設数は伸びています。
◇不動産投資対象はコンドミニアム
カンボジアでは外国人の土地の所有は禁じられており、所有できるのはアパートやコンドミニアムといった集合住宅の2階以上のみとなります。また外国人が所有できるのは、全床面積の70%以下であることが条件です。従ってカンボジアでの不動産投資の対象はコンドミニアムの2階以上の部屋の分譲購入となり、投資を見込んだ外国人投資家による大型コンドミニアムの建設が、特に首都のプノンペンを中心に増えています。こうした外国人向けのコンドミニアムは高い家賃設定となっており、投資利回りはよいといえます。
◇プレビルド方式
カンボジアでの不動産投資は他の東南アジア諸国同様、コンドミニアムの建設着工前に購入し、工事進捗に合わせて分割払いをするプレビルド方式が一般的となっています。着工前に低めに設定された値段で分譲購入し、完成が近づいて値段が上がってきたら、完成前にそれを売ることができるしくみです。キャピタルゲインを求める投資向きといえますが、発展途上国では工事が完了しないリスクもあります。日本では考えられませんが、建設中の建物が完成しないでそのままになっている風景は、発展途上国ではよく見かけます。そのため、信頼できるデベロッパーを選び立地条件などをよく見極める必要があります。
■カンボジアの不動産投資で注意すべき点
◇土地に関わる法的所有権
カンボジアでは、比較的最近の1970年から1993年まで続いた内戦で、土地所有権利書や登記書が失われた土地が依然として多い状況です。土地の所有権がはっきりしていない物件もありますから、土地所有に関わる法的手続きや契約には注意が必要です。
◇不動産詐欺
カンボジアの不動産投資詐欺事件では、日本でも多くの人が被害にあっています。被害者は不動産知識がない日本人や高齢の日本人が多いですが、今後外国人による不動産投資が増えてくると、不動産の知識がある投資家を対象とした手の込んだ詐欺も出てくる可能性はあります。特に利回りのよい物件に対しては、第三者の専門家に相談して確認することも必要です。
◇売却や賃貸対象は富裕層と外国人
経済成長が続いているといっても、2016年のカンボジア人の一人当たりの名目GDPは1,277米ドルで、アジア25カ国中23位です。また2017年の最低賃金は米ドル換算で153ドルと、タイのバンコク地区の266ドルやマレーシアの247ドル、インドネシアのジャカルタ地区の258ドルと比べてまだまだ低くなっています。その分市場の成長はまだまだ見込めると考えられますが、現状では高い家賃によるインカムゲインは、一部の高所得層向けか外国人向けのコンドミニアムとなります。基本的なことですが、投資した物件が高く売れるかや、高く貸せるかを十分見極めた物件を選ぶ必要があります。
他の東南アジア諸国よりもスタートが遅れている分、カンボジアはまだまだ経済発展と不動産市場の伸びる余地はあり、不動産投資にとっては穴場であるともいえます。しかし発展途上国ならではのリスクもあり、投資にあたっては念を入れた調査と情報収集、信頼できる専門家のサポートも必要です。
不動産売買における担保権の設定や登記、賃貸に関する注意事項は、2016年にジェトロが「カンボジアにおける不動産取引に関する留意点」としてわかりやすくまとめています。主にカンボジアに進出する中小企業向けの資料ですが、個人投資家としても参考にされることをおすすめします。
” カンボジアにおける不動産取引に関する留意点(2016年3月)” ジェトロ(日本貿易振興機構) https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2016/c1b0bc6b19754f5e/rp_restatetransptr_Cb201603r.pdf
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