前回は、高齢者が医療とどう付き合うべきかについて説明しました。今回は、「健康診断」に頼り切ってはいけない理由を見ていきます。

健康に対して神経質にならず、楽観的に捉える

健康に対し、過度に神経質にならないことも大事です。世のなかには、クラシックカーを愛する人がいます。今の車とはひと味違う、古き良き時代を感じさせるデザイン性にひかれているのでしょう。

 

クラシックカーは新車に比べ、故障率が高いのが普通です。何十年も使い続けられ、さまざまな部品が老朽化しているのですから、故障しやすいのは当たり前でしょう。しかし本物のクラシックカーマニアは、故障してもまったく気にならないようです。なかには、「故障するところもいとおしい」と感じている人すらいます。

 

みなさんも、自分の身体をクラシックカーと同じだと考えてみてはいかがでしょう。

 

「歳をとったのだから、身体のどこかにがたがくるのは当たり前。そんなに神経質にならず、だましだましやっていこう」と楽観的に捉えるのです。すると、肩の力が抜けて楽に生きられるはずです。

検診は2~3年に一度受ければ十分!?

ですから、検診を受けるペースも、今よりずっと落としていいと思います。これまでは毎年1度受けていた検診があれば、せいぜい2~3年に一度受ければ十分です。また、2~3年に1度検診を受けていた人は、5年に1度くらい受けるくらいでちょうどいいと思います。

 

検査を受けて不安な気持ちになるよりは、その時間を使って友達と話したり、散歩をして美しい風景を目にしたりした方が、ずっと幸せになれるはずです。検診の回数を減らすのは、どうしても不安だという人もいるでしょう。それなら、病院で体重・血圧を測り、検尿だけを受けてみましょう。

 

体重を量って増減をチェックすれば、現在の栄養状態は大体分かります。血圧を測ると、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが確認できます。そして、検尿をすれば糖尿病にかかっているかどうかが分かるのです。高齢者の場合、この3つをチェックすれば、大体の健康状態は把握できると考えていただいて結構です。

 

いくら頻繁に検診を受けても、病気が見つからないことだってあります。例えば、胃がんや子宮がんは見つけづらいがんの一つです。胃や子宮は他の臓器と比べて形が複雑なため、CTやMRI検査ではがん細胞と臓器をはっきりと見分けるのが難しいのです。

 

すい臓がんも、見つけづらい病気として知られています。すい臓は他の臓器に比べて小さく、胃の陰に隠れるような位置にあります。そのため、レントゲンなどでがんを見つけるのが難しいのです。また、中身が詰まっていて「胃カメラ」や「内視鏡」のようなものを入れて観察することもできないため、発見が遅れてしまいがちです。

 

検診を絶対視するのは危険です。いくら検診を受けても、見つからない病気は見つかりません。また、検診を受けすぎると、ストレスが原因で体調不良につながる恐れもありますし、レントゲンを頻繁に受けると被ばくをするリスクも高まります。

 

そこでお勧めしたいのが、「自分の身体が出す信号を、鋭敏にキャッチすること」です。

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2016年9月10日刊行の書籍『長寿大国日本と「下流老人」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

長寿大国日本と「下流老人」

長寿大国日本と「下流老人」

森 亮太

幻冬舎メディアコンサルティング

日本が超高齢社会に突入し、社会保障費の急膨張が問題になっている昨今、高齢者の中で医療を受けられない「医療難民」、貧窮する「下流老人」が増え続けていることがテレビや新聞、週刊誌などのメディアでしばしば取り上げられ…

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