事業承継の選択肢として、かなり一般化しているM&A。オーナー社長として、このM&Aをどう捉えるべきなのか、今回はその考え方のひとつをご紹介します。

自社の魅力を正確に伝えることができるのは誰か?

事業承継といえば「子供に後を継いでもらうこと」と思いがちですが、10年ほど前から、すでに事業承継全体の4割程度は親族以外へ承継されているという統計データもあり、M&Aによる事業承継(=会社の売却)という選択肢は、思いのほか一般的になっています。

 

ただ、現役の社長の中には、こう考える人も多いのではないでしょうか。「当社の場合、M&Aを選択肢とすることができるのだろうか?」

 

 

当然ですが、買い手候補が現れなければ、M&Aはそもそも選択肢とはなり得ません。そして、「会社」が魅力的であればあるほど、買い手候補が現れやすいということになります。

 

買い手候補を探すこと自体は、M&Aアドバイザーなどに依頼できますが、「当社の魅力は何か?」を正確に、そして情熱をもって伝えることができるのは、やはり会社を育ててきた社長以外にはいません。

M&Aを活用し、社長引退の花道を演出する

今、社長が「会社の魅力」のたな卸しを行っているとしましょう。「会社の顧客基盤は偏っていないか、成長性のある顧客と取引しているか?」「会社の商品は競争力があるか、会社の企画開発力は高いか?」

 

そして、社長はふと思いあたります。「これまでの会社の実績を振り返ってみると、実は社長である『私』の営業開拓力、商品企画力、技術力などから生み出されているのではないか? 『私』以外のリソースを見渡したときに、『会社』としての専門部署の組織化や人材育成・権限委譲が十分なのか?」「『私』が退任した後も『会社』は業績を維持・発展させることができるのか?」

 

M&Aによる事業承継では、通常、社長は退任することになりますので、社長の退任とともに会社の魅力も消失してしまうようでは、買い手候補が現れないという事態に陥りかねず、M&Aによる事業承継という仕組みそのものが全く機能しなくなってしまいます。

 

もし、たな卸しの結果、「会社」自体の魅力が十分にあると判断できたならば、さらに「会社」の魅力に磨きをかけます。もし、不安が残るようであれば、「社長」の魅力を「会社」の魅力に転換する鍛錬期間を設け、「会社」の魅力を維持・発展させる仕組みづくりを行います。

 

これは社長業の集大成であり、これによりM&Aは一層現実味を帯び、事業承継の有効な解決策となるはずです。そして、その先には、ハッピー・リタイアメントが待っています。

 

 

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