政治情勢に関係なく成長する観光産業
国内の政治状況にかかわらず発展が継続し、不動産投資に大きな影響を与えるとされる産業がもうひとつある。それはレジャー産業だ。なぜなら、この分野でも民間企業がイニシアティブをとっており、また国内需要ではなく外国からのニーズに応じるインバウンド・ビジネスだからである。
アンコール・ワットしか訪れない観光客が大半であるカンボジアでさえ、2014年には450万人が訪れていることを考えれば、現在の目標値である年間250万人以上という観光客数を呼び込むポテンシャルは、スリランカにある。スリランカはカンボジアよりも幅広い楽しみ方が提供できる国だ。
しかしインフラの発達とは異なり、レジャー産業は一人ひとりの消費者の動向に影響されるので、あらかじめ定めた計画に忠実に沿った形での成長は見込めない。投資に相応しい不動産を選ぶためには、開発計画を読み解くことよりも投資家個人の判断が重要になる。その判断の材料として、スリランカ観光産業の動向を分析しておくことは有効だろう。
欧米からの来訪数を超えたアジア人観光客
中でも押さえるべきなのは観光客の構成比の変化だ。これまでは欧米からの観光客が中心だったが、今ではアジアからの観光客がもっとも多い。
2008年では欧米からの観光客が45%を占め、アジア人観光客は40%を切っていた。しかし2014年には欧米からが41%なのに対し、インドと中国を中心としたアジアからの観光客が43%となった。インドと中国の中流階級がますます海外旅行に出るようになれば、この数字は更に伸びると考えられる。
インドや中国からの観光客は、欧米の観光客とは違った嗜好を持っている。インドと中国の観光客は、海岸でのんびりと過ごすことよりも、文化施設や自然を訪れ、買い物やギャンブルを楽しむ傾向がある。そのため、このような娯楽関連の不動産価格は急上昇するに違いない。さらにインドと中国の観光客はお金をたくさん落としていく。シンガポールを訪れるインド人観光客は、平均より33%も多く宿泊費や飲食代に費やすという。
スリランカ不動産は魅力的な投資先となれるか?
最終的には、それぞれの不動産に対して影響を与えるダイナミックスを分析して、不動産投資は判断されることになる。そのため投資には長期的な時間が必要となる。不動産市況に影響を与えるいくつかのトレンドは政治状況に影響を受けないため、不動産投資の成功を決定づけるのはスリランカの長期的な展望に関する、以下の問いに対する答えが鍵となる。
まずコロンボはスリランカにとって極めて重要な拠点となるのだろうか。次にスリランカはアジアの観光地となれるのだろうか。そして50年後に、スリランカは香港やシンガポールのようになれているのだろうか。これらの問いに対する答えによって、私達のこの国での住み方や都市計画、そしてそれらに伴っての不動産の扱い方は変容していく。これらに対する答えが投資判断の基準となり、そして投資の成否を左右することになるのだ。