自宅と事業用土地は最大730㎡まで適用に
本連載では、いくつかの特例について触れてきました。ただし、税制改正により、適用の条件が年々難しくなる傾向にあります。適切に活用していくためにも、内容をしっかりと押さえておきましょう。
【特例1】小規模宅地等の特例
改めておさらいをしておくと、「小規模宅地等の特例」とは、「自宅の土地」「個人・会社の事業用の土地」「アパート、駐車場の貸付事業用宅地」の土地について、評価額を減額できる制度です。
「自宅の土地」については、配偶者、同居していた親族、あるいは自宅を持っていない親族が相続する際に限り、330㎡を上限に評価を80%減額でき、「個人・会社の事業用の土地」については、親族であれば、上限面積400㎡までが80%減額になります。
また、平成27年1月1日から、自宅と事業用土地については合算し、最大730㎡まで特例が適用できるようになりました。
貸付事業用宅地を併用する場合には、上限面積についての計算法が変わり(上限面積が200㎡以下)、他の宅地の併用に制限がかかりました。つまり、貸付事業用宅地を含めた複数の土地を持っている場合は、どれに適用するのが有利なのかの判断がより困難になっています。
一般的には、減額割合の高い方を優先した方がおトクなようですが、1㎡あたりの地価が高い場合には、貸付事業用を優先した方が有利な場合もあります。なかなか悩ましいところですが、ここは個人で判断するよりも、不動産に詳しい税理士に相談するのが無難でしょう。
二世帯住宅で区分登記している場合は注意が必要
二世帯住宅に小規模宅地等の特例を適用する要件も、平成25年12月31日まで、玄関が一つで家の中で行き来ができる二世帯住宅のみOKだったのが、平成26年以降は、玄関が別の二世帯住宅でも適用できるようになりました。使い勝手がよくなったのはいいことですが、ここでも注意点があります。
それは、親と子供で別々に登記(区分登記)している場合は、特例の適用が親の建物持ち分のみの適用になる点です(生計を一にしていると認められた場合は例外あり)。
実は、各戸ごとに公庫融資を受けたいなどの理由から、二世帯住宅で区分登記にしているケースは意外に多く、私の会社でも相続のご相談で見えて、特例の適用外になることに気づかれる方も多いようです。
共有登記に変更しさえすればいいといっても、そこには手間も時間もコストもかかります。小規模宅地等の特例については、改正も頻繁に実施される傾向にあるため、注意が必要です。