公認会計士は、あくまでも「会計」の専門家
公認会計士は企業会計の専門家です。資産家や富裕層の中でも企業経営者の方々にとっては、強い味方となりえます。また、公認会計士は税理士業務も可能な資格です。
しかし、企業会計と税務会計にはいろいろな違いがあり、税法についてはあまり詳しくない公認会計士もいます。当社が関わったある同族会社のケースでは、親族間での株式の買い取りで監査法人の公認会計士とやり取りしたことがあります。
その同族会社は、先代が創業し、現在は兄弟が株主で、兄が経営に携わっています。ところが、兄の経営手腕によって非常に儲かるようになったら、弟側が大手の監査法人をアドバイザーにつけて持ち株の買い取りを要求してきたのです。
監査法人が提案してきた株式の評価額は、資産ベースのものでかなり高額でした。
相談を受けた当社では、グループ内の税理士法人と組んで税法をベースにした評価額を提示して交渉。結局、大手監査法人が出してきたのは合理的でない算出価格であり、誤っていることを証明でき、こちら側の主張に近い金額で買い取ることに成功しました。
このように、公認会計士はあくまで「会計」の専門家であり、財産評価にかかわるさまざまなルールや方法を知らないことも多々あります。税務に深くかかわる問題では誤った判断をするケースも非常に多いのが実情です。
富裕層の中には資産運用のリスクを理解していない人も
専門家についてのこうした問題の背景には、資産家・富裕層自身が抱える弱点も関係しています。ひと言でいえば、長期的な視点や取り組みが欠如しており、最近は節税対策にばかり関心が偏っていることです。
そもそも資産運用におけるリスクへの理解が十分でなく、学習効果が出ていないということがあるのではないでしょうか。そこで、金融機関の営業担当者による対面販売に頼ったり、会計顧問の税理士のみに頼ることになってしまうのです。
また、日本の資産家や富裕層は、「この人は信用できそう」となると、一人だけ、一社だけになんでも相談してその意見を受け入れるケースが珍しくありません。