前回は、企業の海外進出におけるターゲット国の選び方について紹介しました。今回は、輸出相手国の「経済状況」と「文化的背景」を把握することの重要性を見ていきます。

世界の国々は先進国、新興国、途上国の3つに分類可能

どこの国に何を輸出するかを考えるときに、その国の経済状態(市場の大きさ)をはかることは欠かせません。

 

世界の国々は、経済発展の段階によって大きく3つに分けることができます。先進国と新興国と発展途上国です。

 

先進国とは、一般的には、G7(先進国首脳会議)参加国であるフランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダを指します。フランスとドイツを中心とするEU(欧州連合)を一つの共同体として、先進国に加えてもいいかもしれません。

 

次に新興国とは、大まかにG20から先進国を抜いたものと考えるといいでしょう。新興国には、いわゆるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)が含まれています。ここまでに名前は出てこなかったものの、アイスランドなどのヨーロッパ諸国、イスラエル、アラブ首長国連邦、シンガポール、ニュージーランドなども新興国に位置づけられるでしょう。

 

残りの国は、主に途上国となります。途上国の中でも、イラン、パキスタン、ナイジェリア、フィリピン、エジプト、バングラデシュ、ベトナム、コロンビアなどは、新興国といってもおかしくないくらいの力をつけてきています。タイ、マレーシア、ブルネイ、ミャンマー、ラオス、カンボジアなどのASEAN諸国もここに入ります。

 

ところで、日本と同じ先進国では、物価水準、生活水準などがほぼ同じようなレベルにあるため、価格面での許容度が上がります。というのも、日本と同じ製品やサービスを持っていっても、価格の面で無理をしなくてもよくなるからです。

 

しかし、先進国は主に欧米の国なので、アジアの国である日本とは文化面において、大きな差があります。

 

戦後、欧米に進出した日本企業の多くが工業製品のメーカーであったのは、新しくつくられた工業製品であれば、文化の違いをあまり気にしなくてもよかったという事情があるのかもしれません。

保守的なヨーロッパ、高値でも良品は売れるアメリカ

日本ではひと口に「欧米」といいますが、欧州(ヨーロッパ)と米国(アメリカ)の文化は、実はけっこう異なります。

 

一般論でいえば、ギリシャ・ローマ時代からの歴史と伝統のあるヨーロッパの市場は、概して保守的で、ブランド品がよく売れます。それに対して、240年前に建国された新しい国であるアメリカの市場は、新しいものであっても良品であればきちんと売れるという印象があります。

 

アメリカ人の先祖は主にヨーロッパ人なのですから、その気質はたいして変わらないのではないかという考え方もありますが、200年以上も前に、住み慣れた故郷を捨てて、船でアメリカ大陸へ移住するという決断をするのは並大抵の勇気の持ち主でなければできないはずです。

 

そのような人たちの子孫がアメリカ人なのですから、開拓者精神(フロンティア・スピリッツ)があって、楽天的(ポジティブ)で、進取の気性に富んでいるといわれても納得できるような気もします。

 

遺伝的なアメリカ人気質があるかどうかはともかくとして、アメリカでは、たとえ高額商品であっても、本当に良いものであればきちんと買ってもらえます。

 

たとえば、とある日本のアパレル企業が、芸術的な刺繍がデザインのポイントになっている非常に質の良いニットの帽子をアメリカに輸出したことがあります。

 

日本でも2万円以上するような商品で、価格がネックになるのではないかと思っていたのですが、アメリカではとても人気が出て、想定以上の売れ行きになりました。個人的な印象にすぎませんが、アメリカでは、良いものは高くても売れるものだと感じたものです。

国内頭打ち商品で利益を生み出す 海外進出戦略

国内頭打ち商品で利益を生み出す 海外進出戦略

田中 義徳

幻冬舎メディアコンサルティング

国内では売上・利益ともに頭打ちで生き残りが厳しく、海外進出を試みても撤退を余儀なくされる――中小企業はどこに活路を見出せばいいのでしょうか。 海外のマーケットでは、日本国内と同様のマーケティング、営業手法で成果…

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