かつらブームの終焉で、売上が落ち込んだカネカだが…
昔の日本では売れていて、いまは売れなくなったものが、海外ではまだ売れる――日本と海外で経済発展の状況が異なる以上、これはたしかにあることです。
しかし、海外市場が日本と違うのは、経済発展の段階ばかりではありません。気候も違えば、食べ物も違うし、ファッションやライフスタイルなどの文化も違います。人口構成も産業構造も違いますから、日本ではニーズのあまりないものが、海外ではおおいに必要とされることもよくあります。
その良い例が、カネカの開発した人工毛髪です。人工毛髪の主な用途は、日本ではかつらであり、ニッチな市場だと見なされています。
1960年代から70年代のかつらブームのときには、数多くの日本の繊維メーカーが人工毛髪の素材を提供しましたが、現在はカネカを含む2社のみとなっています。ところが、この人工毛髪を、ヘアー・エクステンション(付け毛)やファッション・ウィッグ(女性用かつら)などの頭髪装飾品として、大量に必要としている地域があります。それがアフリカです。
カネカは、かつら用の人工毛髪として合成繊維の「カネカロン」を販売していましたが、70年代にかつらブームが終焉したことで、売上が落ち込んでいました。このとき、偶然に発見したのがアフリカ市場です。
世界の40%のシェアを握ることに成功
1983年、ニューヨークに出張していたカネカの営業マンが、カネカロンの付け毛を大量に買い付けるセネガル人を見ました。
そこで、アフリカの市場調査を行ってみたところ、くせ毛の多いアフリカでは女性用のファッション用品として、付け毛やかつらが非常に人気があることがわかりました。アフリカにおける頭髪装飾品の旺盛な需要を確認したカネカは、以来、アフリカ市場の開拓に邁進します。
その甲斐あって、現在、カネカの付け毛製品は、アフリカの頭髪装飾品市場の60%、世界の頭髪装飾商品市場の40%のシェアを握っています。