金融界と同じく「海外依存」を強める保険業界
保険業界にとっても、海外部門収益は業界の覇権を巡っての重要な要素になってきた。業界トップの日本生命グループは、2015年度からスタートした中期経営計画で、今後10年間で国内外の戦略投資に約1兆5000億円を投じる計画を打ち上げた。
海外事業を含むグループ事業利益で3年後に300億円、10年後に1000億円を予定と、数字も公表。これまで慎重姿勢だった同社の海外戦略は、積極的な買収戦略へと転換している。
背景には、業界2位の第一生命とのトップ争いがあり、10年後を見据えると、現状の国内重視の収益構造では限界を迎えることに危機感をもったことが戦略転換を後押ししたといえる。
この日本生命グループを追撃している第一生命グループが、海外事業を成長戦略として積極的に取り入れたのは2000年代も半ば以降。中でも2015年2月の米国生保グループ、プロテクティブの買収(買収金額約5800億円)は、日本の保険会社による過去最大の海外M&Aだった。
海外進出に慎重なのが住友生命グループ。同グループの進出先は中国、ベトナム、インドネシアなどの3カ国。利益での貢献度合いでみると、海外事業が30%を占める第一生命保険と比べると本格的な収益貢献はまだ先になる。
長期間をかけ、じっくりと事業を発展させる構えだが、2016年2月、米国の上場生命保険グループであるシメトラ社を完全子会社化し米国市場への大きな足がかりを構築した。
[図表1]SMFGのアジア展開
英国のEU離脱決定で、先行きに不透明感も
一方、3メガ損保の海外事業は、ここ数年一気に加熱している。もっとも積極的なのは東京海上グループ。2016年3月期決算では、グループ中核である東京海上日動火災の最終純益が3016億円なのに対して、海外保険会社の合計の最終利益は1115億円と37%を占めている。
[図表2]東京海上グループ 2016年3月期実績(事業別利益)
ASEANで№1になるというのがMS&ADグループの目標。シンガポール、英国、米国に3つの地域持株会社を設立し3極体制を軸とした事業展開を行なっている。
また、SONPOグループのグローバル展開は、欧米を軸とした先進国市場への進出と、アジア、ラテンアメリカ、中東と北アフリカを合わせたMENAを中心とする新興国における取り組みの強化という2つの柱からなっている。
しかし、この海外戦略も英国のEU離脱で先行きに不透明感が漂っている。第一に、世界経済がさらに収縮する結果、一段と金融緩和が進み、銀行収益を圧迫する懸念がある。
またこれまで、日本の金融機関の欧州ビジネスは、単一の免許でEU域内での営業が出来る「パスポート制度」で、英国に現地法人を設立して本拠地とし、英当局の認可(免許取得)を受ければパリ、ミラノなどに店舗を出すことができた。
しかし、今後この制度を利用できなく可能性がある。そうなれば、英国以外のEU諸国に現地法人を作る必要が生じるなどの路線の見直しが必要になる。