前回は、「達成感」の与え方を取り上げました。今回は、国公立大学トップ校への合格も可能にする「頭の使い方」について見ていきます。

「なぜ? どうして?」と自問自答しながら理解していく

私の塾では「思考」の授業の教材として、中学校の算数の入試問題を使っています。算数の問題を使う理由は、第一は難問が揃っていること、第二は入手しやすいことです。あえて付け加えるなら、算数は成果が出やすいこともあります。

 

それまで勉強が苦手だった子ども、学校の成績が今ひとつだった子どもたちでも、考える訓練を続けているうちに必ず改善効果が出てきます。それも算数が苦手だった子どもほど、劇的な改善ぶりとなります。これには本人自身が何より驚くのです。今までさっぱりわからなかった算数の問題が解ける。これがどれほど大きな自信につながるか、わかるでしょうか。

 

少しできるようになると、学校のクラスのみんなの見る目が変わってきます。いわゆる一目置かれる存在となります。この変化は、子どもの自信に多大な影響を与えます。自分はできると思えば、その自信は他の教科にも波及していきます。

 

しかも、一度頭の中に考える回路ができてしまうと、どの教科を学んでも考えて理解するようになります。いつも「なぜ?」「どうして?」と自問自答しながら理解していくので、無理に暗記することなく知識が知恵となって身につくのです。

 

学校の勉強レベルなら、これだけで一気に優等生へとジャンプアップすることができるでしょう。そのために、どれだけ苦しい訓練に耐えなければならないか。心配は不要です。実は、この程度なら正直なところ、それほどハードな訓練をしなくても、わりと短期間にたどり着けます。要するに、それまでまったく使えていなかった頭を、少し使えるようにするだけの話ですから。

 

けれども、考えることの面白さと、考えることによる自分の変化に気づいたほとんどの子どもが、さらにその上のレベルを目指すようになります。一度考えるサイクルが回り始めると、その動きは決して止まることはありません。およそすべての生き物の中で、なぜ、人間だけが巨大な脳を持っているのでしょうか。脳を使って考えることが、人間を他の動物とは違う存在にしました。人は本来、考える生き物なのです。考えれば考えるほど新たな疑問が湧いてくる、それを解くことが楽しみになる。そんなサイクルが回り始めます。

考える力があれば、受験勉強の時間は大幅に減らせる

時々、雑誌などで「東大生の勉強法」といったタイトルがつけられた特集記事を目にすることがあります。仕事柄、そういう記事にはできるだけ目を通すようにしていますが、読んでいて気がついたことがあります。こうした特集に登場する東大生はほとんど全員が、幼い頃から自分で考える習慣を身につけているのです。何ごとにも不思議を感じ、疑問を持ったら「なぜ?」と自分に問いかける。自分で抱いた疑問に対しては、できる限り自分でわかろうと努力する。結果的には、こうした習慣を持っている子どもたちが、東大に進んでいることがわかります。

 

灘中学校や開成中学校などのトップレベル校に合格する子どもたちの多くが、やはりこうした子どもたちです。つまり、自分で考える力を持っている頭の柔らかな子どもたちが、トップレベル中学校に合格し、後に東大や京大に進んでいくのです。

 

であるならば、彼らのように考える力を養いさえすれば、最終的に東大に合格することも決して夢ではないと考えています。実際に、私の塾からもこれまでに、何人もの東大生や京大生が出ています。彼らに共通するのが、数学をはじめとする理数系の教科については、ほとんど受験勉強をしなかったと語ってくれること。考えれば解ける問題は、考える力さえあれば必ず解けるからです。考える力がついていれば、受験勉強に費やす時間を大幅に減らすことが可能です。

 

さらに頭を使えるようになると、知識の定着率も高まります。覚える時も丸暗記や棒暗記をするのではなく、覚えるべき内容を自分なりに考えて咀嚼した上で頭に入れます。頭の中に自分でラベルをつけた引き出しが用意されていて、そこに入ってきた知識をきちんと整理するイメージです。それぞれの引き出しの間に、どんな関係性があるのかを、自分で把握しているから、新しく入ってきた知識を既存の他の知識と関連づけて理解できます。

 

そうなると知識の定着率も自然と高まっていくでしょう。意味や関係性をきちんと理解して、知識を定着させることが、国公立大学トップ校の2次試験を突破するための必要条件だから、考えて知識を定着させる勉強法は、結果的に受験にも有利となるのです。

東大・京大に合格する 子どもの育て方

東大・京大に合格する 子どもの育て方

江藤 宏

幻冬舎メディアコンサルティング

「うちの子は勉強しているのに成績が上がらない」、「あの子は勉強しているように見えないのにいつも成績がいい」と感じたことはありませんか? 実はわかりやすい授業ほど、子どもの可能性を奪っているとしたら──。 40年に…

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