前回まで、子どもの「考えるモチベーション」を高めるトレーニング法を取り上げました。今回は、できるだけ早くから開始したい「子どもに頭を使わせる」訓練について考えていきます。

悪影響を与える可能性が高い「詰め込み教育」

子どもの教育に関しても、二極分化が進んでいるように思います。一方の極には、何とかして子どもを東京大学に合格させようと、幼い頃からの教育に力を入れるグループがあります。もう一方の極には、教育の意義そのものを否定する恐ろしい親たちも出始めているようです。どちらも問題だと思います。

 

子どもを東京大学に合格させたい一心で、早ければ2歳ぐらいから早期教育を受けさせる親がいます。幼児向けの塾などに通わせるから、幼稚園入園時には早くも漢字を読み書きできたり、掛け算の九九ができたりするようになっている。

 

その後も計算教室に英語教室、リトミックなどに通わせる。勉強だけではよくないからと、体を鍛えるためにスイミング教室やバレエなどまで習わせる。

 

まるで一分一秒でも無駄にしたくないぐらいの勢いで、子どもの時間を習い事やお勉強で埋める。家では、母親がつきっきりで本を読み聞かせたり、計算ドリルをやらせたり、漢字の書き取りに励ませる。わからないことがあれば、インターネットを駆使して母親が一生懸命に調べた結果を、できる限り子どもにわかりやすく教える。こうした幼児教育は、どちらかといえば子どもに悪影響を与える可能性が高いことを、ここまでお読みいただいた方ならご理解いただけるでしょう。

 

幼少期からこのような教育を受けて東大生になる。それも一つの生き方であり、そのための猛勉強も、忍耐力を養う意味ではそれなりに価値があるのかもしれません。

 

ただ、正直なところ「かわいそうだな」と思わずにいられません。そんなことをしなくとも、東大に合格できる可能性は十分にあります。それも、ごく普通に育った子どもたちです。受験勉強に使う時間も、うんと少なくても大丈夫なのです。ただ一つだけ大切なこと、それはできるだけ早い時期から、頭を使う訓練をすること。これだけなのです。

頭を使う訓練に最適な、習字、将棋、算数…

早い時期から知識を詰め込む必要など、まったくありません。頭を使えるようにさえなっていれば、知識は自然に身につくものです。計算能力を身につけるにしても、小学校に入学してからでも十分間に合います。

 

だから幼稚園の頃から習い事などする必要はないのです。それでもあえて何か習わせたいと考えるなら、日本古来の習い事や音楽をお薦めします。なぜなら、そうした習い事では、学ぶ際に集中力を要求されるからです。

 

例えば習字などがその典型でしょう。決して急がされることなく、落ち着いて、丁寧に字を書く。習字を習えば、きれいな字を書けるようになることに加えて、一定時間一つのことに集中する力が養われます。後に算数の問題を集中して考える訓練をすることを思えば、習字のように集中力を養えるお稽古ごとを選ぶのがよいでしょう。

 

あるいは手軽に始められて、ゲーム感覚の楽しさもある将棋や囲碁もお薦めです。駒の動かし方さえ覚えれば、とりあえず始めることのできる将棋なら、一人でも詰め将棋で楽しむことができます。もちろん、将棋は頭を使うゲームです。頭を柔らかくする訓練としても効果があります。

 

小学生になれば、算数の問題を解くことが考えるための最高の練習になります。この場合は、計算問題ではなく文章題に取り組みましょう。計算問題は機械的に計算するだけで、頭はほとんど動いていません。

 

これに対して文章題は、問題文に描かれている情景を頭の中で想像することが、問題を考えるスタートになります。想像は頭を使います。例えば「りんご2個を、3人で分けたい。どのように分ければよいか」という問題なら、2個のりんごと3人の人を思い浮かべるでしょう。これも頭を使う訓練になります。さらに図を描くようにすれば、よりよい訓練になります。

東大・京大に合格する 子どもの育て方

東大・京大に合格する 子どもの育て方

江藤 宏

幻冬舎メディアコンサルティング

「うちの子は勉強しているのに成績が上がらない」、「あの子は勉強しているように見えないのにいつも成績がいい」と感じたことはありませんか? 実はわかりやすい授業ほど、子どもの可能性を奪っているとしたら──。 40年に…

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