「旬なテーマ」の投資対象を組み入れたファンド
いつの時代も、テーマ型ファンドと呼ばれる投資信託は人気があります。一昔前では、太陽光発電などに投資をするクリーンエネルギー関連ファンドがありました。
最近では、世界的な高齢化による医療ニーズの高まりとバイオ関連の進展をテーマとしたヘルスケア関連ファンドや、機械化をテーマとしたIT関連が人気を博し、現在は、フィンテックやAI(人工知能)関連のファンドや、米国のトランプ新大統領の経済政策を期待したインフラ関連投資も目立ちます。
どういったものをテーマ型ファンドと呼ぶのか正式な定義はないのですが、その時に話題になっている革新的な事象や、大きなトレンドになりそうな動きに関連するテーマを取り上げ、そのテーマにおいてメリットを享受しそうな投資対象を組み入れたファンドと言えるでしょう。このタイプのファンドは、一般的にはテーマに沿った株式に投資するファンドが多いです。
特定のテーマに投資するため、分散効果は低くなる
これらのテーマ型ファンドは、旬な話題性があって魅力的な投資対象ではあるのですが、投資におけるリスクの観点で言えば注意すべき3つの特徴を有しています。
その1つは、ある程度話題になっているテーマでは、関連する株式の株価はすでにかなり先の将来性を期待した水準まで買われていることが多く、割高になっている可能性が高いことです。身近なものでも、人気の商品や話題の食材には多くの人の興味が殺到して、高い価格がつけられていても品薄になることがありますよね。こういったことは健康関連の商品でよくみられる光景です。
たとえば、米国のセレブが愛用していることで話題となったココナッツ・オイルは高くても飛ぶように売れました。チアシード・オイルも流行りました。でも、一定期間が過ぎて過熱した人気が下火になると、売れ残った商品が処分品コーナーで大量に割引販売されているのを目にします。このように、人気が出て殺到すると株式など金融商品の価格は妥当な水準をかけ離れて大きく上昇するのですが、人気が冷めると反動で大きく下落します。テーマ型ファンドは、その商品性からこういった動きが表れやすい特徴があります。
2つめの注意点は、テーマ型ファンドは「特定のテーマ=特定の業種など」に集中的に投資をするので、たとえ広範囲の複数銘柄に投資していたとしても、分散効果はそれほど大きくないことです。
たとえばヘルスケア関連だと、薬品や医療、介護サービスなどの銘柄が中心になります。これは市場全体においてかなり特定の業種に限られているので、市場全体の動きと連動する可能性は小さくなります。特定の業種など偏った投資対象の動きは、みなさんが思っているよりもかなり変動が激しいことには注意が必要です。たとえば2016年には日本銀行がマイナス金利を導入したことを嫌気して、銀行の株価はあっという間に軒並み3~4割も急落しました。市場の過去の動きを振り返っても、こういった例は枚挙にいとまがありません。
【図表】日本株式におけるTOPIX(全体)と銀行株指数の推移
3つめとして、テーマ型ファンドは、テーマに沿った銘柄を選別するアクティブファンドがほとんどです。これはファンドマネジャーと呼ばれる運用責任者の腕の見せどころでもあるのですが、銘柄を選別するには調査や分析などの負担もかかるため、ファンドの運営費用は高くなりやすいことも気にとめておきましょう。
このように、テーマ型ファンドはわかりやすく魅力もある一方で、意外と価格変動リスクが高く、費用も低くはない商品性を有しています。また、どこからが割高なのかといった判断はプロでも難しいため、いつどのタイミングであれば売却して投資を止めるべきかなどの見極めは難しく、あらかじめ想定しておくこともしづらいです。
許容できるリスクの大きさに合わせて投資を
これらから、テーマ型ファンドは長期の資産形成におけるコアの投資対象として据えるべきではないと言われています。こういった特徴を持つファンドに対しては、テーマに付随するリスク要因についてはきちんと理解し、実際に投資を行うに際しては、投資するお金を調整することで対処することが無難です。
株式に投資しようと考えるお金のすべてをテーマ型ファンドのようなタイプに投資するのではなく、たとえば株式資産の半分以下、投資資産全体からみても3分の1程度など限定的にとどめておくことで、万が一に想定外の動きが生じたとしても、その影響を和らげるように備えておくことです。
テーマ型ファンドの魅力はロボット関連や先端医療など収益の源泉がイメージしやすく、利益への期待を具体的に感じることができ、実際に大きく収益を得ることができるのも事実です。でも、リスクリターンの観点からみれば、大きく上昇するということは大きく下落する可能性もあることと表裏一体です。価格変動をリスクと捉えるならば、自分の許容できるリスクの大きさに照らし合わせて、適正な金額を投資するという点を念頭に置くべきでしょう。