ポジティブ経験指数は2009年と同水準も、内訳は低下が目立つ
2025年の「ポジティブ経験指数」は70でした。これは、世界の民主主義の後退、分断の深化、資源・通貨の武器利用の横行、長期にわたる高インフレの継続、通貨価値の希薄化懸念の増大といった、金(ゴールド)相場を超長期視点で押し上げる土台として機能していると考えられる「非伝統的な有事」の拡大がはじまった2010年の直前(2009年)と、同じ水準です。
足元のポジティブ経験指数は、非伝統的な有事の高まりや、それが一因となった中央銀行の金保有増加などが目立ち始め、金相場の長期上昇トレンドが始まった2010年ごろと、ほぼ変わっていません。
しかし、ポジティブ経験指数を細分化すると、異なる見方が浮上します。ポジティブ経験指数を構成する、「昨日の一日の大半を楽しく過ごした」と回答した人の割合は76%から70%に低下しました(2009年→2025年)。「昨日はよく休めた」は71%から71%で変わらず、「昨日、何か面白いことを学んだり、体験したりした」は44%から54%に大きく上昇、「昨日はよく笑ったり、笑顔を見せたりした」は75%から72%に低下、「昨日は一日中、敬意を持って扱われた」は85%から83%に低下しました。
SNSやAIなどの高度な情報技術の普及によって、個人が得られる情報や体験が増え、それを背景に「学び」の項目が大きく上昇したことが、他の項目の低下を相殺し、指数を2009年と同水準の70に保った直接的な要因になったと考えられます。この項目を除けば、楽しく過ごした人の割合も、笑った人の割合も、敬意を持って扱われたと感じた人の割合も、低下しているのです。
ネガティブ経験指数は24から31へ、すべての項目が上昇
2025年の「ネガティブ経験指数」は31でした。2010年の直前(2009年)は、24でした。
同指数を細分化すると、「昨日の一日の大半を、怒りを感じて過ごした」と回答した人の割合は20%から23%に、「昨日の一日の大半を、悲しみを感じて過ごした」は18%から26%に、「昨日の一日の大半を、ストレスを感じて過ごした」は30%から36%に、「昨日の一日の大半を、不安を感じて過ごした」は31%から38%に、「昨日の一日の大半を、身体的な痛みを感じて過ごした」は23%から33%に、いずれも上昇したことがわかります。
2010年の直前(2009年)から足元にかけて、ポジティブ経験指数の構成要素の多くが低下し、ネガティブ経験指数の構成要素はすべて上昇しました。このことは、「非伝統的な有事」の拡大を、ひいては金相場の長期上昇トレンドを支える、大変に重要な要因です。こうした個人レベルの感情の変化が、世界全体の民主主義後退、分断深化などを草の根レベルで支えていると考えられるためです。
「スマートフォンの普及」、それによるSNSとAIの普及が、ポジティブ・ネガティブ経験指数という、感情的なウェルビーイングの動向に、深く関わっていると、筆者は考えています。
吉田 哲
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
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