お金の価値は「使い方」で決まる
高齢者のなかには春江さんのように、日々の生活は質素でも多額の金融資産を保有している人がいます。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、70歳代の単身世帯の金融資産保有額は、平均1,489万円、中央値500万円となっています。平均値が中央値を大きく上回っているのは、多額の資産を保有する一部の世帯が平均値を押し上げているためです。
もちろん2億円という資産は、この年代でも極めて大きな金額ですが、春江さんのように都市開発や道路整備などに伴う農地売却によって大きな資産を手にした高齢者は、全国に一定数存在します。
ここで注目すべきなのは、資産の大きさそのものよりも、春江さんの「お金に対する姿勢」です。春江さんは大金を持ちながらも、贅沢には関心がありませんでした。贅沢をすること自体が悪いわけではありませんが、春江さんにとっては自分らしい豊かな暮らしではなかったのです。
一方で、孫の美穂さんが人生の大きな問題に直面したときには、1,000万円という大金を使うことをためらいませんでした。春江さんは、自分にとってお金を使うべきところと、そうでないところが明確だったのです。
十分な資産があれば、将来の生活に対する不安を減らすことができますし、困ったときに選べる手段も増えます。
春江さんは2億円という資産を持ちながら、お金を使うことを我慢していたのでもなく、自分が必要とする生活水準を理解していたからこそ穏やかに暮らしたのではないでしょうか。そして家族の危機という「ここぞ」という場面で、惜しみなくその資産を活用しました。
お金を持っているからといって必ずしも贅沢をする必要はありませんし、反対に将来のためにお金を貯めることばかり考え、自分が大切にしたいことに使えないのも、もったいないでしょう。資産を築いたあとには、「自分がなにを実現したいのか、そのためにお金をどう使うのか」という視点が欠かせません。
そして、美穂さんの行動からも重要な家計管理の教訓が得られます。離婚や転職など、人生の大きな転換期において経済的な不安は大きな障害になりがちです。しかし、漠然とした不安を前に立ち止まっていても、事態は好転しません。
たとえば、離婚したあとになにがいくら必要になるのかを書き出してみて、毎月いくら必要なのかを計算してみます。そのうえで、自分の収入や養育費、利用できる公的支援などを確認し、不足額を把握。もし不足するのであれば、働き方を変えたり、住居費を抑えたり、資格を取得して収入を増やしたりといった、具体的な対策を考えることが必要です。
また離婚時には、婚姻中に夫婦で築いた財産について、財産分与を受けられる場合もあります。不安に思っていることは言語化、数値化してみると問題、課題として見える化できるでしょう。
不安を不安のまま立ち止まっている暇があるならば、問題の本質はなにで、どうしたら解決できるのか、具体的な計画を考えてみることが重要です。
なお、今回のように祖母から孫へ1,000万円を渡す場合には、贈与税にも注意が必要です。孫名義の通帳であっても贈与税の対象になる可能性もありますので、税理士などの専門家に相談し、適切な方法を検討することが望ましいでしょう。
小川 洋平
FP相談ねっと
ファイナンシャルプランナー
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