(※写真はイメージです/PIXTA)

進学や就職を機に親元を離れる若者は少なくありません。自分の収入で生活を始めれば、家賃や光熱費、食費など、それまで意識しなかった支出も毎月発生します。一方、離れて暮らす親には、電話やメッセージだけでは子どもの生活ぶりが見えにくいものです。

「お金送ろうか?」に長男が首を振った理由

総務省『日本の統計2025』に掲載された『家計調査』の年齢階級別集計によると、34歳以下の単身世帯の消費支出は月平均17万281円。このうち食料は3万8,666円、住居は3万6,954円、交通・通信は2万1,403円でした。

 

由美さんは息子に、「足りないなら、お金を送ろうか」と聞きました。拓海さんは首を振りました。

 

「別に赤字じゃないからいい。最初から自分の給料で暮らすつもりだったし」

 

実際、拓海さんは家賃を滞納していたわけでも、借金をしていたわけでもありません。友人と食事へ行くこともあります。

 

ただ、給料日前には外食を減らす。欲しい服は翌月まで待つ。コンビニへ毎日寄らない。一人暮らしを始めて、自分なりに支出を調整するようになっていました。

 

厚生労働省『令和7年賃金構造基本統計調査』によると、2025年の大学卒の新規学卒者の所定内給与額は月平均26万2,300円。拓海さんの月収24万円はこの平均を下回ります。限られた収入のなかで一人暮らしを続けるには、支出を抑える必要がありました。

 

由美さんが気になったのは、食事でした。

 

「節約するのはいいけど、食べるものまで削らなくていいでしょう」

 

すると拓海さんは、「だから部屋に来てほしくなかったんだよ」と言いました。

 

「母さん、絶対そう言うと思ったから」

 

由美さんはそこで初めて、息子が部屋を見せたがらなかった理由を理解しました。生活が破綻していることを隠していたわけではありません。親に見せれば心配され、援助を申し出られる。それが嫌だったのです。

 

由美さんは帰宅後、「食べたいものがあったら送るから言って」とメッセージを送りました。しばらくして、拓海さんから「じゃあ米だけ頼む」と返ってきました。

 

数ヵ月後、拓海さんは自分から「最近は弁当作ってる」と写真を送ってきたそうです。

 

「私が想像していた『大丈夫』とは違いました。でも、困っているからすぐ助けなければいけない状態でもなかったんですよね」

 

親から見れば、食費を抑えたり狭い部屋で暮らしたりする子どもの姿は心配になるものです。一方、若い時期には、限られた収入のなかで自分なりに家計を組み立てる経験もあります。

 

大切なのは、「一人で暮らしているから大丈夫」「節約しているから困窮している」と一方的に判断しないことでしょう。離れて暮らす家族だからこそ、本人がどこまで自分でやりたいのか、どんなときには助けが必要なのかを、ときどき確認できる関係をつくっておくことが重要なのかもしれません。

 

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