想定以上に敷地を削らなければならなかった理由
狭隘協議を申請したところ、役所から連絡があり、近隣で過去に狭隘協議が完了している図⾯と、今回の後退⽅法についての指⽰を受けました。役所の判断は、該当地について「“確定中⼼”を採⽤する」とのこと。
道路中⼼の考え⽅には、⼤きくわけて以下の2つがあります。
・確定中⼼:役所と境界確定をした「道路線形」の中⼼から2mを振り分ける⽅法
・現況中⼼:現地のL型側溝、縁⽯、ブロック塀などを参考にした「現況の道路幅」の中⼼から2mを振り分ける⽅法
Eさんが想像していた後退量とのズレは、役所が「確定中心」を採用したことが原因だとわかりました。
「見えている道路」と「実際の境界線」は一致しない
Eさんの土地は、平成初期に役所の事業によって道路境界が確定済みでした。当時の登記名義人である父親も立ち会い、境界を確認していた記録が残っていたのです。
その境界確定時の記録をもとに現地を復元すると、Eさんの敷地の側溝面から1.81mの位置に道路境界線が引かれていました。しかし、向かいの敷地も含めた現在の側溝間の現況幅は2.73mであり、Eさんの側溝面から1.81mより先の部分は、向かいの住民が所有する土地となっていたのです。
一般的に、道路と私有地の境界は側溝面などを基準に捉えることが多いですが、古くからある細い路地などでは「見た目の道路=実際の境界」とは限りません。建て替え時にセットバックしていたり、過去に所有者が任意で敷地の一部を道路として提供(セットバック状態にして通行を許可)していたりしたケースなどでは、役所が施工した側溝があっても、権利上は私有地のままになっていることが少なくないためです。
今回は公的な境界が確定済みだったため、役所としては現況道路の中心ではなく、「公的に確定している道路線形(確定中心)から2mの後退が必要」と判断しました。その結果、Eさんのイメージしていた後退量と相違が生じたわけです。
意外と新しい制度「狭隘協議」
狭隘協議の要綱などは、平成13(2001)年ごろから告⽰・制定された後退⾃治体が多く、それ以前にセットバックを⾏った⼟地は、狭隘協議を経ずに後退しているケースが多々あります。
そのため、すでに現地で後退しているように⾒えても、狭隘協議が未実施の場合は、改めて⼿続きをしなければなりません。 その結果、過去に後退したつもりの後退ラインと、協議後に提⽰された後退ラインがズレてしまうこともあるのです。
このズレが原因となって、近隣地権者とのトラブルに発展することもあるため、セットバックを伴う⼟地の後退ライン判断等はとても慎重に行われます。
セットバックがトラブルのもとになるケースは多い
こうした仕組みと経緯をEさんに説明したところ、Eさんも昔の記憶を思い出し、「そういえば子どものころ、目の前の道路はいまよりずっと狭かった」と納得されました。
セットバックの⽅法(現況中⼼か確定中⼼か)によって削られる敷地⾯積が⼤きく変わるため、特に地価が⾼いエリアほど後退⽅法に対して敏感になる施主が多いのが実情です。また、セットバックは、⻑い年月をかけて、それぞれの⼟地で⾏われるため、経緯等が不明確になりやすく、勘違いから「正しくセットバックできていない」と近隣から指摘を受けることもあります。
みなし道路の後退ラインは、特定行政庁である⾃治体が公的な基準に基づいて公平に判断するものであり、特定の利害関係者の意向で左右されたり恣意的に決められたりすることはありません。
今回は、Eさんの認識の間違いや勘違いでしたので、無事に理解いただけましたが、 後退ラインの整備や、道路の中⼼へ⽬印の設置、道路の境界確定が必要な場合は、近隣地権者から承諾等をもらう必要がある場合も。その場合は、トラブルを防ぐためにも、いつも以上に丁寧な説明等をいつも以上に⼼がけています。
小川 曜
土地家屋調査士
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