妻が亡くなっても遺族年金はもらえない?
正一さんのケースで注目すべきポイントの1つが、夫婦のどちらかが亡くなった場合の年金収入です。
老後の生活設計では、多くの場合は夫婦2人分の年金を前提に、毎月の収支を計算しているでしょう。しかし、夫婦のどちらかが先に亡くなれば、その人が受け取っていた老齢年金は原則としてなくなります。その際、一定の条件を満たせば、残された配偶者が遺族年金を受け取れる場合がありますが、亡くなった人の年金がそのまま遺族に引き継がれるわけではありません。
子のいない夫婦のどちらかが亡くなった場合に受け取ることができる遺族年金には、遺族厚生年金があり、年金額は、原則として亡くなった人の老齢厚生年金の4分の3を基礎に計算されます。
しかし、65歳以上で自分自身の老齢厚生年金を受け取っている場合には、自分の老齢厚生年金が優先して支給され、遺族厚生年金の計算額がそれを上回る場合には、その差額が支給される仕組みです。
正一さんの場合、和子さんには結婚前、そしてパート勤務時代に厚生年金加入歴がありましたが、正一さん自身の老齢厚生年金のほうが多かったため、遺族厚生年金を受給することはできなかったのです。
老後破産へ陥った根本原因
さらに深刻だったのが生活費の変化です。
妻が亡くなったことで年金収入は月10万円程度減少しました。加えて自炊をしてくれていた妻がいなくなり、外食が増えたことで食費が増えていたのです。それまで配偶者が担っていた家事を外部サービスなどで補うようになれば、支出が増えることもあります。孤独を紛らわせるための交際費も増加し、支出は月28万円から34万円、50万円と、倍近くに増えていき、2人だったころと比較すると、毎月の収支は悪化の一途を辿りました。
総務省「家計調査(2025年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、1ヵ月の消費支出は平均26万3,979円。一方、65歳以上の単身無職世帯では14万8,445円となっています。夫婦2人から1人になっても、生活費は半分にはならないことがわかるでしょう。住居費や光熱費など、1人になっても大きく減らない支出もあります。
老後の生活設計では、夫婦2人で暮らしているあいだだけでなく、どちらかが先に亡くなった場合にも準備をしておく必要があり、生命保険の活用はその手段の1つです。
実際に死別が起きた場合には、まず、現在の収入と支出を整理し、今後の生活にどれくらいのお金が必要になるのかを把握しましょう。大切なのは、なににお金を使いたいのかを考え、優先順位をつけること。そして予算を決めること。収支を管理し、しっかりコントロールしてください。
人とのつながりを求めるのであれば、地域のボランティア活動や趣味のサークルといった選択肢も挙げられます。体力や健康状態に問題がなければ、短時間の仕事をして収入を得ることで予算を増やすこともできます。仕事を通じて人と接する機会が増えれば、収入面だけでなく、日々の生活にも変化が生まれるかもしれません。
人生には、時として今後の人生設計が大きく変わることもあります。そんなときこそ、現在の資産や収入、支出を改めて確認し、これからの生活を考え直す必要があります。
老後のライフプランニングは、夫婦2人の生活を考えて終わりではありません。どちらかが先に亡くなったあとも、残された人が安心して自分らしい生活を送れるよう、収入と支出の両面から備えておきたいものです。
小川 洋平
FP相談ねっと
ファイナンシャルプランナー
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