サプリメントに配合した乳酸菌は胃酸に強いというが…
欧米型の食生活が普及するとともに、足りない栄養素を補う「サプリメント」もすっかり日本に定着した感があります。乳酸菌入りのサプリメントもスーパーやドラッグストア、通販で手軽に買うことができ、健康のために利用しているという人は多いのではないでしょうか。
錠剤や粉末状になったものが多く、携帯に便利で保存も利き、味もほどよい甘さと酸味のあるヨーグルト風味が多いので、お菓子感覚で摂れるというのが、一般的な乳酸菌サプリメントの特徴でしょうか。特に若い女性には、健康だけでなく美容にもいいと、好まれているようです。
錠剤や粉末になっていると、ヨーグルト製品に比べ、乳酸菌がぎゅっと高濃度で詰まっているイメージがあり、見た目にいかにも身体に良さそうなイメージもあります。そして、そうしたサプリメントの多くも、ヨーグルトと同様に「生きた菌」に力を入れています。
普通の乳酸菌は腸に届くまでに胃酸などで死んでしまう、でもこのサプリメントに配合した乳酸菌は胃酸に強いので、腸まで生きて届く、といった具合です。
サプリメントの乳酸菌は「仮死状態」に加工されている
しかし、そもそもサプリメントとして、錠剤や粉末状になったものの中に、乳酸菌がぴんぴんして存在しているか、といえば、乳酸菌のことを何も知らない人でも、違和感というか滑稽に思わないでしょうか。
こうした形状の場合、成分のすべては乾燥状態になっています。つまり乳酸菌もフリーズドライ加工されているのです。いってみれば「仮死状態」で配合されているというわけです。
フリーズドライとは、食材などをマイナス30℃程度の低温で凍結し、さらに真空状態にして乾燥させる食品加工技術を指します。乳酸菌などのプロバイオティクスもこの加工により保存性を高めることができます。確かに、死なせてしまうわけではありません。
しかし、加工時には死んではいないかもしれませんが、体内に入って確実に生き返る保証もないのです。
当研究所でも、フリーズドライ状の乳酸菌を研究に使うことはよくあります。しかしこれを〝生き返らせる〟には、37℃の環境で液体培養し、栄養物をたっぷり入れて長時間待たないといけません。それでも生き返らないことが多々あるのです。とても繊細な環境管理が必要であり、ましてや人の腸の中で、確実にそれが行われるとは考えにくいのです。
フリーズドライ化した乳酸菌のサプリメントを摂取後、たとえ体内で過酷な条件をクリアし〝生き返った〟乳酸菌があったとしても、それが腸内フローラに定着する保証がないことは、ヨーグルトの項で話した通りです。菌であれども生き物です。
たとえ理論上では、生き返ったり元気を取り戻したりすることが可能であるとしても、実際には、そう思い通りにはいきません。