銘柄に対するバフェットの評価とは?
バフェットはグレアム&ドッドの『証券分析』をバイブルにして投資人生を歩み、世界
最高の投資家にのし上がったが、現在のポートフォリオ投資(企業経営には参画しないか
ら企業価値の上昇と配当収入が目的)の主な銘柄をみてみよう。
①ウェルズ・ファーゴ(WFC)
米国の最大手銀行で米国の西海岸を中心に力点を置いて成長してきた。最近も手元資
金に余剰が出ると折に触れ買い増し筆頭株主になった。この銀行は日本では知名度は
低いが米国では個人の間でも評判のよい堅実な金融機関だ。住宅融資に力を入れるが、
堅実な経営方針でリーマンショック時にも被害は少なかった。バフェットをコピー(提
灯をつける)する場合には是非とも投資したい株である。
②コカコーラ(KO)
説明の必要のない銘柄であり、市場ではあまり話題にも上らないが、相場環境の不透明
なときには威力を発揮する。2016年5月現在では1年間で+14%とS&P500の横ばいに対して抜群の成果を上げた。毎日、株価の動きを意識してみているとバフェットの選択眼のすぐれていることがよくわかる。そのブランド力は抜群だし、アルコール類の飲料を一切口にしないバフェットには一流レストランでもお好みの飲み物で、食事のときは顧客に飲み物としてすすめる。
③IBM(IBM)
ハイテク嫌いの掟を破って初めてハイテク株に大量投資した。生み出す安定的なキャシュフローと自社株買い、配当に注目して2011年に初めて投資したが、その後も折に触れ買い増している。現在のポートフォリオ投資銘柄では上位第二位である。今後はクラウド・コンピュータ、人工知能で力を発揮するだろう。
④アメリカン・エキスプレス(AXP)
世界的なブランド力をもつ個人金融関連で安定的な成長を続ける。NYダウ平均の採用銘柄で最近は株主還元にも力をいれる。ダウ平均にはほかにビザ(V)がはいっているが、アメリカン・エクスプレスの個人金融ビジネスに関してバフェットの評価は高い。コカコーラと同じように相場の環境に関係なく株価の着実な上昇が継続する。毎日、ダウ平均の採用銘柄の動きをチェックしていると、その実力が実感できる銘柄である。
⑤ウォールマート(WMT)
米国での消費関連のシンボル的な存在である。オンラインによるeコマースの普及で地盤沈下がいわれるが、それにも対抗策をとり消費者にとっての重要な位置づけは変わらない。
下落トレンドのPCP株を買った理由とは?
最近もバフェットは持ち株比率を引き上げた。最近の例ではプレシジョン・キャストパーツ(PCP)があげられる。
2015年8月にプレシジョン・キャストパーツ(PCP)という航空機関連の機器メーカーの買収を明らかにした。370億ドル(4兆700億円)の資金を投入した。日本では知名度は高くないが、航空機のほか電力発電向けのプラントの心臓部品のメーカーで米国の産業界にとっては存在感の高い企業である。
バフェットがかねて「巨像を狙う」と宣言していた大物買収の一つである。株価は2014年の高値から30%も下落していたが、買収のタイミングを狙って動いた。彼の人生では大物の買収案件である。これまで大手鉄道会社バーリントン・ノーザンを傘下に収めたが、それを上回る買収金額であった。
「米国株への投資は最高の資産運用手段」という信念を実現してみせた。86歳のいまもなお株式市場で資産運用に全力のエネルギーを注入する姿には感嘆のほかはない。株価の動きをみると2014年末に天井を打ち下落トレンドにあった株である。しかし企業の内容を精査し先にあげた三つの鉄則からしてバフェットが有望と判断した。
株価は2008年のリーマンショック時と同じように2014年には30%以上の下落になったが、リーマンショック後には6倍以上の上昇を記録した。バフェットが銘柄選択に当たって利用する〝安全マージン〞(safety margin)という数値の高い典型的な例である。
PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)では計れない、株式投資のリスクを減らすことを狙う。最近は私の旧知の仲の米国の有力ファンド・マネジャーがよく口にする言葉だ。投資価値、競争力、製品のシェア、ブランド力……などを意味するが、プレシジョン・キャストパーツは〝安全マージン〞の高い企業である。このような巨象の買収のケースをみると彼の投資原理の理解に大いに役立つ。